生まれて初めて万年筆クリニックに行ってみました。文房具屋の一角で、パイロットのペンドクターと営業さんがスタンバイしています。
万年筆クリニックだけじゃなく、万年筆のメンテナンスについて話をすること自体が初めての経験なので、いろいろ新鮮でした。
この記事ではどんな万年筆を診てもらったのか、どんなメンテナンスをしてもらったのかなど、万年筆クリニックについての体験談を書いています。
もくじ
インクフローが悪い万年筆
診てもらった万年筆はウォーターマンのフィリアスというもので、ヤフオクで落札したけど金属は腐食してるしインクフローは悪いし挿しっぱなしのコンバーターは錆びてるし、かなり長期間放置した形跡のあるものでした。
自分でなんとかインク詰まりを直そうと、口で吹いたりしましたけど、結局溶かしきれずにインクフローは完璧には改善できませんでした。
フィリアスについて調べたら、もともとはそれなりのお値段がするもの(といっても数千円ですが)なので書けるようになったら嬉しいなぁとは思うんですけどね。
↓ちなみに自分で出来る限りインク詰まりを直した後の筆跡がこんな感じでした。
ゆっくり書くと何とかかすれないけど、ちょっとでも速く書くとかすれてしまうという程度のインクフロー。比較対象のカクノはどんなに速くてもかすれません。
万年筆のインクフローを良くするための調整
たぶん長期間放置したせいでインクが固まっているんだろうと薄々思ってはいたんですけど、確信も無かったので全体的に診てもらえるってのは万年筆クリニックの良いところですね。初心者であればあるほど。
スポイトを使って洗浄
まずはスポイトに空のカートリッジを取り付けた小道具で洗浄してもらいました。使用済のカートリッジとスポイトを組み合わせて自作しているとのこと。
そしたら作業を始めるやいなやペンドクターいわく、
「うわっ・・・これは詰まってますね―」
とのことでかなりの抵抗があるらしく、相当インクが中で固まっているご様子。リアクションを拝見する限り結構頑固なインク詰まりみたいでした。
ちなみに自宅でインク詰まりを直すためにいろいろやった限りでは口にくわえて吹き出すということはやっていたので、すでにスポイトと同じようなことはできていたらしく、それでも取れないインク詰まりだったようです。
超音波洗浄機
スポイトによる洗浄じゃラチがあかなかったので、超音波洗浄機にかけることになりました。
↓こちらがペンクリニックで使用していたCITIZENの超音波洗浄機。
シチズンは超音波洗浄機の中でもちょっとお高いほうで、安いものは3,000円くらいからあります。
超音波洗浄機の中に万年筆のペン先をおもむろに沈めて、スイッチを入れると中からインクがジワーっと溢れてきます。
スポイト洗浄ではもうインクが出てこなくなっていたので、おそらく超音波洗浄によって溶け出てきたんだと思います。
ちなみに超音波洗浄機はペン先のメッキを剥がしてしまう可能性もあるので、日常の万年筆メンテナンスではあまり推奨しないみたいです。
ペンドクターからも事前に「メッキが剥がれるかもしれないよ」と確認を取られました。
超音波洗浄器でも固まったインクは取りきれなかった
↓2分くらいかな?超音波洗浄機にかけてから水気を拭き取るとまだまだグレーのインクが出てきます。
インクを取り切れれば透明になるはずですが、グレーになるということはまだ中にインクが残っているということ。
ということでさらに強めの洗浄方法をすることになりました。
洗剤を付けてから超音波洗浄機
マジックリンを半分に薄めた液を中身に浸透させて超音波洗浄機にかけました。洗剤+超音波洗浄なんて結構な負担になるかもしれないので、もちろん日常的なメンテナンスでは非推奨です。
超音波洗浄機にかけてしばらくするとジワーっとインクが溶け出てきたので、まだまだインクの固まりが残っていることがわかります。
インクフローが改善した!
洗剤+超音波洗浄機にかけてもまだ少しだけ拭き取りでグレーのインクが出てきていたのでこれでダメだったら諦めるしかなかったんですが、なんと、
インクフローが改善されました。
↓こちらがインクフローをチェックした筆跡なんですけど、全然かすれなくなりました。「かすれない」っていうだけで安心感が全然違います。
こういう瞬間は、修繕したことを実感できるので良いですねー。
切り割りでインクフローの調整
インクフローがある程度改善したので大部分の問題は解決したんですが、それ意外にも自分の好みや持ち方によって細かい調整をしてもらいました。
もうちょっとインクフローを多くするために切り割りを広げてもらいます。
ペン先の研磨
自分は一般的な万年筆の角度よりも立てて書いているらしく、それに合った研磨をしてもらいました。(写真に写ってる万年筆はカクノです。フィリアスのほうは写真撮り忘れました)
10000番のペーパーを使って研磨しているそうです。(10000番とは言ってもどんな種類のヤスリなのか(水ヤスリとか)聞いてませんでした。)
インクフローが劇的に改善した
まぁこんな感じで至れり尽くせりの万年筆メンテナンスをしてもらったおかげで、カクノほどじゃないけど、ものすごくインクフローが改善されました。
1.水に浸け置き
2.口で吹いて洗浄
(自分ではここまで)
↓ここから万年筆クリニック)
3.超音波洗浄機
4.洗剤をつけて超音波洗浄機
という順番で処置をしたことになりますが、よっぽどひどいインク詰まりじゃない限り改善するんじゃないかと思います。
ただしこの中でも超音波洗浄機は自分で買うには大げさすぎるし、普段使うことがないので、万年筆クリニックなどのチャンスがあればやってみるくらいのつもりでも良いかなと。
万年筆は普段からの手入れがとても大事
これは万年筆についてよく言われることですけど、毎日ちょっとずつでも書いてインクを流してやることが大事。
万年筆を買ったばっかりの時は意識して書くことも多いけど、時間が経つと使わなくなっちゃいますよね。
そういう意味では万年筆の数を増やし過ぎたら手に余るので、実用的な範囲であれば2本や3本で十分なんだろうなぁと思います。
もし長期間使わってない万年筆があるなら、絶対に洗浄しておいたほうが良いですね。
※その後、ペンドクターが使っていた洗浄用のスポイトを自作してみました。