さて前回のALPS軸にスムースエイドを塗った時の記事ではギッシギシのキーボードに思いっきり手抜きでスムースエイドを塗りました。
そして幸か不幸か、だいぶタッチが回復してしまったので、そのまま塗りたくっていきました。
だがしかし、説明書と照らし合わせるとひどい処理です。
明らかに間違ったやり方を参考にすると良くないので、一応正しいと思われるスムースエイドの塗り方を、公式サイトを引用しながらまとめておきます。
少し用語説明だけしておきます。
ルブ(Lube)とは直訳すると「潤滑剤」のこと。
キーボードだと、「ルブする」といって、潤滑剤を塗ることを指します。
よく出てくる用語なので、覚えておいてください。
このページに書いてある内容は完璧ではなく、著者はルブに関して経験豊富ではありません。
指南書としては適していないので、読み物として読んでください。
こんなページでも検索で上位にヒットしてしまうくらい、スムースエイドの情報が少ないんですよね。
スムースエイドの使い方
今回試しているALPS軸の場合、洗うためにスライダーとキャビネットを取り外しました。
キャビネットの隙間に精密ドライバーを潜り込ませて
つまむように引っ張りあげるとパカっと取れました。
当然、キーボードのスイッチ構造によっては分解しないといけないので、もっと手間がかかる場合もあるでしょう。
自作キーボード界隈はルブ関連の情報も充実してきたので、自分の使用しているスイッチについて検索したほうがしっかりした情報が得られると思います。
スライダーとキャビネットを洗浄・脱脂
新しい潤滑剤を塗るためには、油分や汚れを落とし、さらにもともと塗ってある潤滑剤を落とす必要があります。
この工程を脱脂といい、きちんと塗るための重要な作業になります。
自作キーボードなどで、潤滑剤が塗られていないとわかっている新品のスイッチなら、この脱脂の工程が必要なくなります。
あるいはもともとの潤滑剤は被膜がちゃんと残っていて、汚れで滑りが悪くなっているだけなら、掃除(マイクロファイバーで拭き上げるとか)するだけで潤滑性を復活させることもできるかもしれません。
乾燥皮膜をつくるスムースエイドがもともと塗ってあった場合は、拭くだけでOKなこともあると思います。
脱脂するなら、とりあえず素材がプラスチックなので、
- 金属専用のパーツクリーナー
- 有機溶剤
などは使わないようにします。
考えられる方法は、
- 無水エタノール
- 洗剤
などがありますが、実は正直、どうすればベストなのかよく分かっていません。
とりあえず無水エタノールをつけてメラミンスポンジでこすってます。
もともとの潤滑剤がオイルやグリスだったら、見た目の変化でわかるでしょう。
スムースエイドみたいな乾燥皮膜だったら変化がわかりにくくて不安になるかもしれません。(というかもともとスムースエイドが塗られていたら脱脂せずそのまま使ったほうが良いと思いますが)
スムースエイドを塗る
今回例に出したChicony KB-9600のALPS軸は以下の写真のように端の4カ所でスライダーとキャビネットが摩擦する構造になっていました。
要するに摩擦する箇所にスムースエイドを塗る、とだけ意識しておけばいいでしょう。
キーボードの種類によって全然違うので、実際にスライダを動かしてみて、目視で確認したほうがいいと思います。
自然乾燥
公式のRO-59の使用方法によると、
- ワーク(対象物)の脱脂洗浄を行い、油分や汚れ等を完全に取り除いて下さい。
- 洗浄後のワークを乾燥します。
- 乾燥後RO-59を刷毛塗り、ディップ、スプレー等で塗布します。
- 塗布後加熱乾燥を行う前に、ワークに塗布したRO-59の水分が乾燥するまで自然乾燥を行います。(約10~30分)
- RO-59の水分が無くなったのを確認したら、約90℃で30分加熱乾燥を行います。(グレードによって乾燥温度/時間が異なります)
- 加熱乾燥後、仕上がりを確認し完成です。ペーパータオル等でこすることで潤滑性を確認できます。
⑤の乾燥時間が製品によってかなり違い、スムースエイドRO-59tmKTの場合は65℃で約3分、または一昼夜自然乾燥。
↓一応加熱乾燥のほうがいいけど、自然乾燥でも十分に定着性はあるとのこと。
“加熱乾燥と自然乾燥によるRO-59の効果の違いは定着性に若干影響があります。加熱乾燥の方が優れますが自然乾燥でも十分に定着性があります。”
また、現在RO-59tmKTは販売終了していて、RO-59tm4XOを代用品として利用する場合は乾燥時間がもう少し伸びます。
参考:キーボード潤滑剤「スムースエイド」RO-59tmKTの代用品RO-59tm4XO
スムースエイドを手抜きで塗るとどうなったか
さて、前回手抜き作業した悪い例を見てみましょう。
- 洗浄していないのでスムースエイドのノリが悪いはず
- キャビネットを外さずに横から流し込んだので自然乾燥がしっかりできていないと思われる
- たぶん内部で塗り溜まりがある
- 加熱乾燥していない
それでも劇的にタッチは回復したので、やらないよりはマシかもしれませんが、ちゃんとやるに越したことはありません。
最初は引っ掛かりがあるキーがたくさんあり、キーの端を押さえたら、ほとんどのキーがタイピングできないような状態でした。
それが手抜きでもスムースエイドを塗った(染み込ませた)後は中心を押すとスムースにタイプできて、端っこだとカサカサ音は鳴りますがなんとかタイプできるほどの滑りに回復した、というのは参考までに。
手抜き作業はおすすめできない
それでも滑るようになるならやってみようと思うかもしれませんが、基本的に流し込むような手抜き作業はおすすめしません。(当たり前)
ALPS軸の内部にある金属部分にスムースエイドが付着したら、あとあとサビるかもしれないからです。
スムースエイドって水で希釈したものなので、思いっきり水分含まれてるんですよね。
実際、金属部分に付着したものが見つかりましたがすごく錆びそうな雰囲気が伝わってきます。
実際にルブするときにどんな道具を使うのかは、自作キーボード界隈のブログを見たほうがはるかに参考になると思うので、「キーボード ルブ」で検索してください。
ただ、まぁこれも手抜き作業をした一例として参考になるんじゃないかと思います。錆びるかどうかは当分先の話でしょうけど。
まとめ
スムースエイドは潤滑剤として確かな性能はありますが、販売終了して入手が難しくなったことや、自作キーボード界隈でのルブ情報が充実してきたのもあって、こだわる必要もなくなってきているかもしれません。
キーボードのルブについて調べたいなら、自分でも「キーボード ルブ」「キーボード 潤滑」とかで検索してみることをおすすめします。
参考:キースイッチ ベストプラクティス – recompile keys
参考:ルブの湯加減はいかがですか? – 自作キーボード温泉街の歩き方
いま更新している時点ではKrytoxという潤滑剤が性能もよくて定番っぽいですが、スムースエイドと違いがあるのかは比較したブログなど見つからず。
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あと、そもそもキーボードのルブ作業は手間と時間がかかるので、高級キーボード、レトロキーボードじゃないと、割に合わないと思います。
むしろコスパ度外視で良いものにしたいと思う人向き。
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