このブログでは「フリック入力練習アプリの比較」について記事を書いていますが、最近はフリック入力についての記事を見かけることがたまにありました。
- 若者のキーボード離れ加速 レポート・卒論でフリック入力も│NEWSポストセブン
- スマホのほうが仕事が速い若者が出現 | あるある日記 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
- パソコンを使えない新入社員増 スマホネイティブの弊害│NEWSポストセブン
だけども、フリック入力で仕事ができる!という論調には気をつけてください。
フリック入力も文字入力だけなら確かに実用的な速度で入力できるけど、仕事で使う場合は速度以外の面でデメリットがいろいろあるので、とくに就職を控えている学生は知っておきましょう。
少なくとも「フリック入力が速いからタイピングは練習しなくていいじゃん」というのはやめておいたほうがいいです。
もくじ
フリック入力のスピード
フリック入力で速い人はどのくらい速いのか動画を探してみると、確かにびっくりするほど速い人は存在します。
1分あたりひらがな215文字。(キーボードによるローマ字入力の打鍵数に換算すると、1分あたり約365打鍵に相当します。※ローマ字入力はひらがな文字数に対して約1.7倍の打鍵数)
これをタイピングで例えるとどのくらい速いのかというと、(同じ基準で比べるため、次のワードが表示されているタイプの)タイプウェルでレベルSE。上位40%くらいに位置します。
とはいえ、一般的にはパソコンのキーボードによるタイピングでもこの動画に勝てない人は多いんじゃないでしょうか。
キーボード入力のスピード
自分はトップレベルと比べたら全然速くありませんが、タイプウェルのランキングで上位5%の位置。タイピングだと1分あたりひらがな300~350文字、1分あたり500~600打鍵くらいのスピードになります。
トップレベルだと1分あたりひらがな600文字、1分あたり1000打鍵くらいになるので、フリック入力では勝つことができません。
さらに漢字変換はタップ操作が増えるので、フリック入力がさらに不利になります。
このため、いくらフリック入力で速くても限界があることを知っておきましょう。それだけ練習するならパソコンのタイピングをやったほうが役に立つ場面が多くなります。
パソコンでフリック入力するツール・アプリ
一応、パソコンで直接フリック入力したり、スマホから文字を転送するツールがいくつかあるので、少し紹介しておきます。
↓主に以下の3種類のアプローチがあります。
- タッチパネル搭載のパソコンでフリック入力
- アプリからパソコンに文字を転送
- Bluetooth接続で文字を転送できるUSB周辺機器
タッチパネルでフリック入力できるフリーソフト
スマホのフリック入力がいくら速くても、パソコンに転送できない職場だったら全く意味がなくなってしまいます。
なので、もしタッチパネル搭載のパソコンや、タブレットパソコンだったら、FlickKeyboard、TouchKeyというようなフリック入力できるフリーソフトもあったりします。
↓この動画なんかは、割とスムーズにフリック入力できています。
ただ、スマホよりもフリック入力しづらくなるので、実際に仕事で使われることはほとんどないでしょう。
また、会社がデスクトップパソコンだったら、わざわざコストが高くなるタッチパネル対応の液晶モニタは使いません。
仮にできたとしても、画面に手を伸ばしてフリック入力をし続けると非常に腕が疲れると思います。
そのため、現実的にはSurfaceなどのタッチパネル対応のノートパソコンで利用する可能性があるくらいでしょうか。
Remote Mouse
例えばRemote Mouseというスマホアプリを使うと、スマホで入力した文字をパソコンに転送できます。
フリック入力だけじゃなく、スマホの音声入力をパソコンに転送したり、マウス操作をスマホで出来たりと機能がいろいろあるので、こちらのほうが実用的かもしれません。
ただしパソコン側に受信するためのソフトウェアをRemote Mouse公式サイトからインストールする必要があるので、会社で使うなら許可が必要になるでしょう。
セキュリティが厳しい会社ならフリーソフトに許可が降りなかったりするので、フリック入力が速くても宝の持ち腐れになります。
また、リアルタイムに文字が入力されるのではなく、送信ボタンを押してまとめて転送されるので、誤字があったら結局パソコンでの修正作業が必要になります。
FlickTyper BT
「FlickTyper BT」という製品は、スマホとパソコンをBluetooth接続して入力できる周辺機器です。
文字変換の確定ごとにパソコンに飛ばすので、Remote Mouseとできることは似ていますが、パソコン側にソフトをインストールする必要がなく、USBを挿すだけで使えるのが特徴です。
↓受信機をパソコンのUSBに挿して、
↓スマホアプリで文字を送信したりマウス操作したりします。
Amazonのレビューでは、体が不自由でキーボードやマウスの操作が困難な場合に助かったというものがあるので、そういう需要は結構あるのかもしれません。
ただしこれも会社の規定によりますが、USB機器を接続する事自体が許可されていない場合もあります。
仕事にフリック入力使うのはやめておけ
ここまでフリック入力の達人になるとどのくらい速くなれるのかや、フリック入力をパソコンで活用する方法などを書きましたが、フリック入力が速くても、まだまだフリック入力で仕事はやらないほうが良いという状況です。
仕事内容によってはスマホが使えない
そもそも、データ入力の仕事でスマホから入力できるという職場が皆無です。
また、セキュリティが理由で、フリーソフトのインストールやUSB外部機器の接続が許可されていない場合もあります。
「タイピングができなくてフリック入力が速い人」のために職場環境を整える企業というのは、通常考えられません。
それに、スマホが使えない仕事だったら戦力ゼロ。会社にとってお荷物同然です。
何でもかんでもスマホで乗り切ろうとしていると、自分で自分の首を絞めることになります。
データ入力の仕事を単発で受けていろんな職場で働いてる場合は、どのみちキーボード入力が必要になってしまいます。(というかすぐに)
将来的に転職する可能性も考えると、スマホのフリック入力にこだわることがもったいないと言い切れます。
「将来タイピングなんか必要なくなる」とか「これからは音声入力の時代だ」なんて言われることがありますが、すべての会社が一斉にシステムを刷新するわけではありません。
少なくとも、現在のパソコンに替わるものが普及しないと実現しませんし、仕事で使用しているパソコンはソフトウェアやOSに縛られるので、コストの面でシステム全体を刷新する企業はごく少数に限られます。
つまり、変化は少しずつ進むだろうけど、旧態依然の会社はいつまでも残り続けるので、キーボード入力ができないと、進路の幅を狭めるということになります。
そのため、就職を控える学生がキーボード入力ぜんぜんできない、というのは結構なリスクです。
新人教育にコストがかかる
実際に「キーボード入力できないけどフリック入力は速い」という新人が入ってきた場合、以下の心理状態によって部下の教育が大変になります。
すでに慣れている方法(フリック入力)があると、なんとかそれを使おうとして、不慣れな方法(キーボード入力)は敬遠されがちになります。
これは文字入力に限らず、どの分野でも共通の現象です。スイッチングコストというやつですね。
しかし、企業側がフリック入力で仕事できる環境になっていないと、高速フリック入力は宝の持ち腐れになります。
ようするに、求められているスキルとのミスマッチが起こります。
慣れている方法(フリック入力)を捨てて練習するのは気合が必要になるし、キーボード入力が速くなるまでは常にストレスがかかり続けて、モチベーションも保つのが難しくなります。
なので、企業側にとっては、フリック入力だけ速くて「フリック入力なら速いのになぁ」と思っている新人は、教育コストが高くつく、ということを理解しておいてください。
パソコンをメインで使う業務の場合、「フリック入力だけ速い」人はコストの面でむしろマイナスになる可能性があります。
↓職場によってはこのような提案がされるようですが、そのシステムを用意するコストは度外視されています。
嫁が職場の新人教育係をしているのだが、若い社員に仕事のやり方について改善できるポイントを話し合ってもらったら、キーボード入力はうざいのでフリック入力したい、エクセルは時代遅れなのでそれぞれの業務にアプリを用意せい、などが提案された模様😫
— たっくん(保育園送迎係) (@Ttakkuunn) January 30, 2019
このような理由のため、一般的に出勤する職場の場合は、フリック入力だけ速い状態はおすすめできません。
卒論やレポートはできても就職してから使えるとは限らない
約15%がふだんからレポートの下書きやメモとしてスマホを使っていて仕上げはPCでというパターンで、他はキーボードを使っています。
と書かれていました。
スマホ下書きで問題が無いのはWord・Excel・メモなど、使うアプリケーションがだいたい決まっているレポートや卒論だからできるだけで、仕事だったら会社が使うアプリケーションや基幹業務ソフトしか使えないことがあります。
スマホで下書きを書いても、会社のセキュリティが厳しければクラウドは使えず、USBメモリさえ持ち込み不可ということもあります。
フリック入力はキーボードと比べて疲れやすい
単純に指を使う本数が違うってことなんですけど、フリック入力の場合は親指を1本か2本使って入力するのに対して、キーボード入力だと最大9本の指で入力するから指への負担が全然違います。
しかもフリック入力はスマホを保持したまま親指を激しく動かすので、さらに負担は大きくなります。
あと首の角度。キーボード入力だとタッチタイピングなら画面をまっすぐ見るけど、スマホだと下向きになって首の骨に負担がかかってしまいます。いわゆる「スマホ首」が問題になります。
フリック入力はショートカットキーが使えない
キーボード操作との一番の違いと言ってもいいショートカットキーが使えないということ。Ctrlキーも無いし、ファンクションキーも無い。
スマホだと、どうやっても文字入力以外の操作を効率的にできません。
(キーが少ないからこそフリック入力という入力方法が生まれたとも言えますけど。)
コピペ操作を比較すると、パソコンだとCtrl+Cでコピー、Ctrl+Vで貼り付けですが、スマホだとそれぞれの動作で長押しや余分にタップが必要になるので、明らかに遅くなります。
キーボード入力のほうが速くなる
単純なスピードで比較しても、フリック入力は上で書いたとおり、動画で探しても達人級で1分あたりひらがな215文字、これをローマ字入力の打鍵数に換算するとだいたい1分365打鍵相当になり、タイピングの達人レベルの半分以下になります。(タイピングの速度についてはこの下に書きます)
しかもフリック入力は記号の入力やショートカットキーが使いにくい点を考えると、仕事ではさらに戦力が落ちます。
上司から見ると、伸びしろが無い入力方式を練習しても無駄になるから今すぐフリック入力やめてくれ、と思います。
冒頭のフリック入力が速い動画だと、1分間でひらがな215文字でしたが、キーボードのタイピングだとプロほど速くなくても余裕で超えてしまいます。
自分は日本トップレベルの人と比べるとタイピングのスピードが半分くらいですが、(フリック入力と同じような問題で比べると)1分間でひらがな328文字(打鍵数は約500打鍵/分)くらいになります。
↓さらに漢字変換が必要な和文になると、圧倒的にキーボード入力のほうが速くなります。
タイピングの達人級になると1000打鍵/分を超えるので、この動画の2倍ほどのスピードになります。
もちろん慣れによってキーボードよりフリック入力のほうが速いという人はたくさんいるでしょうが、仕事だと文書作成やパソコン操作をするので、文章を入力するだけではありません。
なので、最終的にフリック入力では仕事全般における実用的な速度にはできない可能性が高く、スピードだけを比べても、キーボード入力のほうが速くなります。
まとめ
結局のところ、高校生・大学生でこれから就職を控えている学生に言いたいんですけど、
スマホだけで完結できる仕事なんてほとんど無いんだから、パソコンが使えないと自分の将来が狭くなるだけだよ?
ということです。
「スマホのほうが速いからパソコン要らんし!」
とか言うのはただやりたくない言い訳も含まれてるだろうけど、自分で自分の道を狭くして、将来「やっときゃ良かった~」って言っても誰も助けてくれません。
そして、いざ仕事でパソコンが必要になったら、仕事と並行して練習することになるので、学生のときよりも大変なストレスがかかります。
あと「パソコンを買うお金が無いんじゃー!」という声もあって、本当に経済的にも環境的にもパソコンが持てないこともあるかもしれないけど、じゃぁゲーム機1台も持ってないの?と聞きたい。
結局、パソコンの優先順位が低いだけじゃないかと。
極端ですが、タイピングを練習するだけならこの記事で紹介しているようにBluetoothキーボードとスマホで練習できるし、1万円の中古PCをネットに繋がずにタイピング専用にしても良いかもしれません。
それでも無理そうだったら、学校のパソコン室でタイピングの練習やりたいって言ったらなんとかしてくれることもあります。学生が「練習したい」と意欲を見せたら、助けてくれる人が出てくる可能性もあるかもしれません。
学生のうちは「将来を実感できない」というのもあってパソコンが必要ないと思われがちですが、ここまでの内容を読んで意識が変わったという人だけでも練習してくれればいいなと思います。
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じゃあキーボードでタイピングを練習したいけど、何から始めたら良いのかわからんって人はタッチタイピング(手元を見ないタイピング)について書いた記事を見てください。
大事なのは、スピードや正確性よりも、手元を見ずにタイピングできるかどうかです。
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誤字が多すぎて説得力にかけるので直したほうがいいとおもいます