いまとなっては「ローマ字入力とかな入力どっちがいいのか」って議論も見かけなくなりましたが、初心者に教えるとしたらどの入力方式がいいのか、いろいろ比較しています。
結論から言うとローマ字入力がおすすめです。
というか、初心者だとローマ字入力しかおすすめできません。
JISかな入力は記憶量・難易度・英数字記号の手間・シェアが少ないことによる不便さなど、さまざまな点でデメリットが多いことがわかります。
また、「かな入力のほうが2倍速い」と言われることが多いですが、実際の打鍵数の差は約1.5倍で、さらにそこから打鍵範囲の広さ・シフト打鍵のコスト・打鍵順の規則性に差があるので、速度の差はそれ以下になります。
これについては大会の実績などを掲載しながら、順番に説明していきます。
タッチタイピングの記事でも書いたとおり、“大学1年生でブラインドタッチできるのは20%以下”のような調査がいくつもあるので、日本全体のITレベルを底上げするなら、「より速く」よりも「そこそこできる人を増やす」ほうが大事。
なので、タッチタイピングの難易度やシェアのことを考えると、ローマ字入力しかおすすめできるものがありません。
ローマ字入力は最良とは言えませんが、「ローマ字入力は効率が最悪で遅くするために作られた配列」というのはすでに謎が解けているデマでもあります。
『QWERTYの謎』の記事に詳しく書いているので、ローマ字入力がいかに悪い配列なのか耳タコの人は見てみてください。実際の歴史は違います。
※ちなみに、親指シフトなどのJIS規格じゃない入力方式は、導入のハードルが高いのでこのページには書いていません。
この記事は、あくまで「全体のITレベルのことを考えるとローマ字入力しかおすすめできるものがない」という趣旨です。
そちらにも興味がある人は親指シフトについて書いた記事に詳しくまとめてあるのでどうぞ。
もくじ
ローマ字入力とかな入力の違い
ローマ字入力とかな入力の違いについて、よく議論される点についてまとめました。
筆者はローマ字入力の熟練者(和文10分1500文字前後)ですが、JISかな入力もできたほうがいいと思って、いちおうタイプウェルKで基本常用語66.8秒(250打鍵/分、ランクSF)になるまで練習して、日常使用はできるくらいにはなっていました。(今は練習していないので遅くなってるけど)
コジオニルク – JIS かな打ちを使うことを止めることにしたという記事で、5ヶ月半の練習の末、JISかな入力をやめることにした流れが書かれています。
タイプウェルで常用SA(56~58秒)までやった時点でわかった「小指の痛さ」「ミスのしやすさ」、など、とても参考になります。
JISかなカテゴリを読めば時系列もわかります。このページと似ている部分もあるので、ほかの体験談も読みたい人はおすすめ。
覚えるキーの数
ローマ字入力ではQは使うことがほぼなく、拗音はXとLのどちらか、Cは使わなくても入力できるため、
- アルファベット 23キー
- 句読点 2キー
- 伸ばし棒 1キー
ローマ字入力では、合計26キーで和文入力ができます。
しかも、五十音は子音と母音の組み合わせなので、あ行 [aiueo]・か行 [kakikukeko] のようにルールがあって、[aiueo]と進む法則を知っていれば、「あかさたなはまやらわがざだばぱぁ」の行、合計16パターンの記憶でほぼすべての五十音が入力できます。
さらに
- 「きゃきゅきょ」などの拗音は間にyが入る
- 小さいつ「っ」の促音は子音の連続
- 句読点「、」「。」
を合わせて、合計20パターンの法則でとりあえずすべての文字を入力できます。
※ただしきちんと効率的に打つためには、以下の特殊な法則も例外として覚える必要があります。
- ファ行 fa fi fe fo
- ウィ wi
- ウォ who
- ティ thi
- ディ dhi
最終的に、だいたい25パターンの法則を覚えることにより、ローマ字入力を最小の打鍵数で使えるようになります。
ーーー
それに対してかな入力は、
- 単打すべて48キー
- Shiftキーを押しながら入力するカナ10個
- 句読点2個
を合わせると、かな入力では合計60種類の組み合わせがあります。
※このうち拗音・促音「ぁぃぅぇぉっゃゅょ」は単打の文字が小さくなるだけなので、Shift組み合わせの記憶負担はほぼ無く、おおまかに51パターンになります。
そのため、基本的にかな入力のほうが覚える量は多くなります。
記憶負担について、ローマ字入力使用者の発言で「かな入力はさらにアルファベットを覚える量が多い」と言われることがありますが、実際は英文を打つときに記憶負担の差は無いので、補足しておきます。
これは自分が英語タイピングでも600打/分くらいまでやったから分かりますが、英語はthstchtrshrtghなど、子音→子音の順番がたくさんあるので、日本語のローマ字入力に慣れていても、英語のタイピングは速くなりません。
英語タイピングは、英語での練習が、別途必要です。
なので、最初にアルファベットの位置を覚える段階ではローマ字入力のほうが有利かもしれませんが、英文タイピングを実際にするなら、どちらも関係ありません。
ローマ字入力とかな入力の優劣を議論するときに、「アルファベットを同時に覚えられるからローマ字入力のほうが英語に有利!」というのは表面的な材料から話のネタにしているだけなので、鵜呑みにしないように気をつけてください。
ーーー
「かな入力でも覚えれば問題なく打てるようになる」という意見もありますが、ブラインドタッチできるようになるまでの時間と難易度は、単純にかな入力のほうが難しくなります。
かな入力のほうが打鍵数が少なくても、手元を見ながらタイピングしていたら意味がありません。
手元を見ていると、スピードが頭打ちになり、疲れやすく、打ち間違いに気付くまでに時間がかかり、打鍵数以上のデメリットが出てしまいます。
かな入力でブラインドタッチするのはローマ字入力と比べるとかなり難しいことなので、打鍵数が少ないという理由だけでかな入力はおすすめできません。(難しい理由もこのあと書いていきます)
かな入力でも完璧にブラインドタッチできるなら同じ土俵で比較できますが、手元を見ているうちは、「ローマ字入力とかな入力どちらが良いのか」という比較をしても意味がないので、そこだけは絶対に理解しておいてください。
ブラインドタッチの重要性についてはこちらの記事にも書いているので、まだできていない人は絶対にできるようになりましょう。
打鍵範囲
ローマ字入力は打鍵範囲が狭くてキーの位置を把握しやすく、バックスペースやEnterを誤打する心配もないので、かな入力よりもタッチタイピングが簡単になります。
ーーー
それに対してかな入力は4段をすべて使うので、「そう」みたいな「最下段⇔最上段」の移動が難しく、右手小指の範囲が広く、さらにバックスペースやEnterを打ち間違えやすいので、タッチタイピングがかなり難しく、また、ローマ字入力の「子音→母音」のような単純さがないので、減速せざるを得ないパターンが多くあります。
ホームポジションの位置を変えたり運指を最適化すれば、ちょっとくらい改善することはできますが、初心者には難しく、現実的ではありません。
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少し見方を変えて、「ホームポジションからの距離」(隣接するキー)を図解にすると以下のようになります。
ローマ字入力では、和文で使うキーがほとんどホームポジションから近く、指の場所を把握するのが簡単です。
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それと比べてかな入力では、2キー以上離れているものも多く、飛び飛びの打鍵になったときにタッチタイピングするのが難しくなります。
歴史を追ってみるとわかりますが、かな入力を作ろうとしていた山下芳太郎が考えていた初期のかな配列では、右側の打鍵範囲はそんなに広くなく、現在のJISかな入力とはまったく違ったものでした。
ですが、タイプライターの製作を依頼したアンダーウッド社のスティックネーとさまざまな点で対立し、山下の配列案とはかなり変わってしまい、しかも特許はスティックネー単独名義で出願されました。
山下はもともと体調を崩していたこともあり、スティックネーの特許出願後ほどなくして死亡し、その後のキー配列に関われていません。
↓山下が作った配列案。この時点では頻度を元に配列を決めていた(後述PDFより)。現在のJISかな入力とだいぶ違う。
山下がスティックネーに示した42キー配列案
↓そしてこちらがスティックネーの特許出願した配列。「頻度ではなく覚えやすさで決めるべきだ」という意見を持っていました(後述PDFより)。1923年時点。現在のJISかな入力と似ている。
アンダーウッド式カナキー配列(U.S. Patent No. 1549622)
上記でも今のかな入力と比べたらまだマシで、その後、タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間(6) | 三省堂 ことばのコラムによると、1952年、1964年、1970年と、どんどんキー配列が変わっていき、右手小指の範囲が広くなっていきます。
とくに1952年の変化は激しく、アルファベットを入れるために、最下段のシフト側にあったカナが、濁点の入力しやすさを無視して右手小指に移動させた形跡が見られます。
ほはもともと右手小指にありましたが、せけへが濁点と隣接して配置され、薬指や小指の連続打鍵しないといけなくなったり、小書きのカナ(ぁぃぅぇぉゃゅょっ)がすべて削除されるなど、日本語の入力を軽視していると言わざるを得ません。
1952年12月、日本レミントンランド社は、46キーのカナ・ローマ字タイプライターを発売しました。横書きカナタイプライターに、アルファベット大文字26字を追加すべく、小書きのカナと数字の01を削除し、記号も9字に絞ったキー配列です。数字は最上段に移動しており、アルファベットのキー配列は、Pを除いてほぼQWERTY配列となっていました。カタカナのうち、シフト側にあったセソヘケムメは、別のキーに移されていました。
引用:タイプライターからコンピュータへ:QWERTY配列の変遷100年間(6) | タイプライターに魅せられた男たち・特別編第6回(安岡 孝一) | 三省堂 ことばのコラム
右手小指の範囲が広いのは、上記の配列変化に伴い、アルファベットに追い出された結果です。
↓もう少しこまかい移り変わりはこちらで見れます。
参考:キー配列の規格制定史日本編 : JISキー配列の制定に至るまで
この経緯を見るとわかるとおり、JISかな入力は日本語を打ちやすくするために作られた配列ではありません。
打鍵順の規則性
ローマ字入力は、だいたい「子音→母音」という組み合わせによって入力するので、以下のような打鍵の規則性があります。
↓大部分は以下の打鍵パターン。
例 | |||
母音 | a あ | ||
子音 | 母音 | ta た | |
子音 | 子音 | 母音 | tta った |
子音 | y | 母音 | tya ちゃ |
子音 | h | 母音 | thi てぃ |
n | ん | ||
ー | ー |
子音が最初、母音が最後になることが多いため、子音と母音は交互に打鍵することが多く、子音→子音や、母音→母音の連続はほとんど2打までになり、かな入力よりも打鍵のパターンは少なくなります。
たとえば上記の打鍵パターンがすべて含まれる「ティーショットでホールインワン」で母音に目印をつけると、だいたい1打か2打ごとに母音を打つことがわかると思います。
ティーショットでホールインワン
thi-syottodeho-ruinwan
また、子音 → 子音のつながりは、特定のパターンしか使われません。
↓具体例。
- n → 子音(「ん」)
- 子音 → y(拗音のため)
- 同じ子音の連続(「っ」のため)
ここまでのパターンをまとめると以下のようになります。
- 母音 → 母音
- 子音 → 母音
- ↑母音は5キーしかないのでパターンが少ない
- 子音 → 子音(特定のパターンのみ)
以上のように、ローマ字入力では指に覚え込ませる打鍵パターンが少なくなり、順番に一定の規則性があります。
ーーー
また、ローマ字入力で母音はすべて、打鍵範囲の外側のほうに配置されているのも重要なポイントになります。
最後に母音(AIUEO)を打鍵するのが基本ルールというのと合わせて考えると、ローマ字入力は「内→外」または「下→上」の交互打鍵になりやすいという特徴をもっています。
もちろんすべてではなく、WZPなど、非常に打ちにくい子音もありますが、ほぼすべての文字の最後が母音(AIUEO)で、母音が外側にあるという特徴のおかげで、ローマ字入力ではそこそこ規則性のある打鍵順になりやすいのが特徴となっています。
↓こまかいことだけど、母音との関係を踏まえた上で、キーによる打ちにくさの違い。
- 中央付近のキーは母音と交互打鍵しやい
- KSDはホームポジション中段なので単キーは打ちにくくなくても、母音と組み合わさると打ちにくいことがある
- WZPは薬指や小指の筋力的にも、母音との組み合わせも、打ちにくい運指になることが多い
「ローマ字入力は打ちにくい」と、ひとくくりで言われることがありますが、正しくは良い部分と悪い部分がある、という感じです。
上達するほど感じますが、とくに左手がもつれます。
※これらの弱点は、指のトレーニングによって克服せずに、「ローマ字テーブルカスタマイズ」「単語登録」などの工夫によって解決しましょう。タイパーは、鍛錬や「最適化」で解決しますが、普通の人はそこまでするのは時間の無駄です。
ーーー
いっぽう、母音キー・子音キーという区別が無いかな入力では、非常に不規則な打鍵順が避けられないというデメリットを持っています。
かな入力は、拗音でよく使う「ぁぃぇぉゃゅょ」が上のほうにあってShiftキーとの組み合わせが必要なのと、右手小指のキーが多すぎて打ちにくい運指が多すぎるなど、効率的なタイピングを目指して作られてはいません。
拗音が同じキーのShift打ちだったり、可能な限り単打で五十音を打てるようにしていることを踏まえると、JISかな入力は、パソコンに不慣れで手元を見る人にこそ向いているんじゃないでしょうか。
むしろ、親指シフトについて書いた記事でも紹介しているような、他のかな系配列のほうが、文字の連接を考えて配置するなど、多くの工夫をしていることがわかります。
タッチタイピングの難しさ
ここまで説明してきたように、覚えるキーの数・打鍵範囲の広さ・バックスペースやEnterを誤打しやすいという理由で、かな入力はタッチタイピング(手元を見ないタイピング)の難易度がかなり高くなります。
難しいとついつい手元を見たくなりますが、「タッチタイピングの重要性について書いた記事」にもあるとおり、手元を見るとスピードが頭打ちになり、体は疲れやすくなることが確実で、将来にわたって影響が大きいので、絶対に手元を見たらいけません。
「手元を見るかな入力」をするくらいなら、「手元を見ないローマ字入力」のほうがはるかにマシです。
そのくらい、「手元を見ないこと」が重要ということを知っておいてください。
小学生や中学生がタッチタイピングできるのか?という点で比べても、難しい入力方式は不利になってしまいます。
小学生だったら授業で「手元を絶対に見ないように!」と言っても無理でしょう。でも手元を見たらあとで無駄になるというジレンマ。
それに、中学校だとほぼ確実にローマ字入力で授業が進められ、テストでもローマ字入力しか使えない寿司打で実施するケースがよく見られるので、子供が小さいときに良かれと思ってかな入力を練習させていたら、ローマ字入力への切り替えで負担が増えます。(いちど慣れたやり方があると、心理的にストレスが大きくなる。スイッチングコスト。)
ちまたではもっともらしく「ローマ字入力は、タイプライターのアームが絡まるから、わざと打ちにくく作られた」と言われることがありますが、これは根拠のないデマで、実際は当時のさまざまな理由を元に配列が変化しています。下記に示すとおり、歴史をたどれば一目瞭然です。
参考:パソコンのキーボードは,なぜABC順・五十音順ではないのですか | ことばの疑問 | ことば研究館
参考:QWERTY配列になった理由や歴史・俗説がわかる|『QWERTYの謎』
また、英語タイピングをするとすぐに分かりますが、隣接しているERTYは英単語で連続することが多く、「アームが絡まるから打ちにくくした」という説は矛盾しています。
それに、アルファベットの配列を決めるときに、日本語入力のことは考慮されていないので、QWERTY配列の歴史と日本語入力は別の話です。
この「わざと打ちにくくした」説は明らかに指摘できるほどわかりやすいデマなので、信じてしまわないように気をつけてください。
キーの大きさによる打ちにくさ
「打鍵範囲」と「タッチタイピングの難しさ」を見ると分かるとおり、かな入力は右側にあるキーを正確に打鍵するのが難しいことがハッキリしています。
それを踏まえてキーボードのレイアウトを見ると、右側のキーが極端に小さいものは、モバイル用途でのかな入力に向いていません。
↓たとえば下記のようなキーボード(ロジクールK230)だと、ほへー゜むが小さく、特にー゜むはバックスペースやEnterに誤打したときのロスが大きく、゜は手前の文字の入力からやり直さないといけないという悲惨な配置になっています。
↓傾向としては、ノートパソコンやモバイルキーボードだと゛けろまで小さいものもあります。
ただいま外のカフェでスマホとBluetoothキーボードでのテスト書き込みです。かな入力もできて、結構順調です。不満点と言えば、キーボードの右側のキーが狭いところ。かな刻印で言えば「む」や「け」や「ろ」や濁点が半分ぐらいの大きさです。「け」や濁点はかなり使うからちょっと困る。 pic.twitter.com/E2XwyG80v9
— あまおち総統@AHC代表 (@AHC_soutou) September 8, 2018
最近複数のノートパソコンを使う必要があるのだが、キーボード右端のキーのピッチがPCによって違うので、すっかりタイプできなくなってしまったから。
— sokuri (@sokuri3510) July 24, 2020
ーーー
自分で使うキーボードなら買わなければいいだけですが、たとえば会社から支給されたノートパソコンだったらどうしようもありません。
どのような働き方になるのかまだよくわかっていない、特に学生にタイピングを教える場合は、進路をよく考えましょう。
後述しますが、働きやすさの点で考えても、共有パソコンを使う職場だと、どうしてもかな入力の肩身は狭くなってしまいます。
一般的によく聞く「打鍵数が少ないから速い!」という理由だけで選んでも、結局かな入力を使うことがほとんどない、なんてことになりかねません。
打鍵数の違い
よく “2倍の打鍵数” と言われますが、実際はそんなことなく、
ローマ字入力の打鍵数はかな入力の1.4~1.5倍くらいになり、英数字記号が含まれる文章だと、その差がもう少し小さくなります。
以下、3種類の文章データを分析した結果です。
- 天声人語 3,735字
- さまざまな分野から約4万4千字
- タイプウェル 52,752文字
- ネットなどの文章 約100万字
文字数はいずれもカナ文字数となっています。
天声人語 3,735文字(4日分)
上記ページの中に、天声人語4日分(3,735文字)でローマ字入力・かな入力・親指シフトの打鍵数を比較したデータがあります。
打鍵数 | 比率 | ||
---|---|---|---|
親指シフト | 3735 | 1.0 | Shiftカウント無し |
JISかな | 4110 | 1.1 | Shiftカウント無し |
ローマ字 | 6474 | 1.7 |
JISかなとローマ字を比べると、だいたい1.58倍(Shiftカウント無し)。Shiftキーをカウントすると総打数はもう少し増えます。
ただ、上記の天声人語はいつのものだったのか出典がありません。
できる範囲で検証するために天声人語バックナンバーから調べたところ、かな入力は1日につき拗音30回・句読点40回=計70回ほどShiftキー打鍵があったので、おそらく上記(4日分)だと250~300ほど打鍵数がプラスされます。
少なく見積もって200打鍵プラスでも6474÷4310=1.50倍なので、実際の打鍵数(総打数)の差は1.5倍前後(Shiftカウントあり)になる計算です。(あとで紹介するタイピングの大会でも係数として1.5が使われています)
最初にも書いたとおり、この天声人語3,735文字は引用されることが多いのでひとまず例として書きましたが、引用元は「NICOLA 日本語入力コンソーシアムのNICOLA配列キーボード日本工業規格(JIS)化要望書」で、以下の不明点があるため信頼性が非常に低くなっています。
- 具体的にいつの天声人語を利用しているのかハッキリしない
- 打鍵数の分析として3735文字は少なすぎる
- 天声人語のみだと文体が偏る
このNICOLAが示したデータよりも、このあと分析する「タイプウェル52,752字」や「Web記事100万字」のほうがサンプルがハッキリしていて信頼性が高くなっています。
ほかにも、NICOLA日本語入力コンソーシアムのサイトに掲載されている打鍵数比較動画(魚拓)は、英数字記号がなく、Shift打鍵のコストが無視されていて、ローマ字入力が不利になる表現方法になっているので、この天声人語の元データも公平なのか疑わしいと思われてもしかたありません。
打鍵数の比較として使われることがよくありますが、ブログで紹介しようとしている人は、上記のように信頼性が低いことを理解した上で使ったほうがいいと思います。
さまざまな分野から約4万4千字
独自に分析されたnoteより。
文体や分野(会話体、文章語、手紙、子供用、専門分野…)によって出てくる言葉が違いますので、平均的なテキストを作るのは、なかなか難しいのですが、なるべくいろいろな分野からとって、自分で作ってみました。全約4万4千文字のテキストです。
↓分析によって得られたストローク数がこちら。
- JISかな配列で、 1.221 ストローク/文字
- ローマ字入力で、 1.746 ストローク/文字
割り算すると、約1.43倍の打鍵数。(Shiftカウントあり)
タイプウェル 52,752文字
問題収録数が多く、一般的な単語や接続詞なども多いタイプウェルの収録ワードを分析した結果がこちら。
全体 | 常用 | カタカナ | 漢字 | 慣こと | |
収録ワード数 | 10731 | 2155 | 3177 | 3325 | 2074 |
R打数 | 90232 | 13774 | 27616 | 22076 | 26766 |
カナ文字数 | 52752 | 7927 | 16848 | 13308 | 14669 |
K打数(Shiftなし) | 59862 | 9003 | 19598 | 14868 | 16393 |
K打数(Shiftあり) | 63495 | 9375 | 20866 | 15741 | 17513 |
R / カナ | 1.71 | 1.74 | 1.64 | 1.66 | 1.82 |
R / K(Shiftなし) | 1.51 | 1.53 | 1.41 | 1.48 | 1.63 |
R / K(Shiftあり) | 1.42 | 1.47 | 1.32 | 1.40 | 1.53 |
- 問題文とローマ字はタイピング練習ソフト「TypeLighter」から
- 「ローマ字かな変換」ツールでローマ字からカナ文字を取得
- すべてのワードと集計結果はGoogleスプレッドシート
基本常用語・カタカナ・漢字・慣用句ことわざ、というようにさまざまなジャンルのワードで、合計でカナ52,752文字を対象にローマ字入力とJISかな入力の打鍵数を比較すると以下のようになります。
- ローマ字入力90,232打鍵
- かな入力Shift無し(動作数)59,862打鍵(1.51倍)
- かな入力Shiftあり(総打数)63,495打鍵(1.42倍)
JISかな入力に有利なShiftカウント無しでも1.51倍、実際は影響するShiftカウントをありにすると1.42倍の打鍵数という結果になりました。
※さらにタイピングゲーム・タイピングソフトは基本的に句読点が無い、もしくは少なめなので、句読点でShiftが必要になるJISかな入力は、実際の文章でもう少し不利になります。
また、ジャンルごとに特徴があり、
「カタカナ用語」はローマ字入力が有利になり、
「慣用句ことわざ」だとJISかな入力が有利になります。
このような、入力する文章によって違うということもわかります。
ネットなどの文章約100万字
もうひとつ、1万字のかなを入力する場合の打鍵数という分析より。
サンプル対象となるデータはさらに多く、カナ100万字です。
この分析では、元のデータはカナ100万字の集計で、それを「カナ1万字あたり」に換算しています。
- ローマ字入力17,019打鍵
- かな入力Shift無し(動作数)11,169打鍵(1.52倍)
- かな入力Shiftあり(総打数)12,256打鍵(1.39倍)
タイプウェル全体の分析結果と近い値になりました。
ローマ字入力とJISかな入力の打鍵数を比較した場合、
- Shiftをカウントしなければ1.5倍
- Shiftをカウントするなら1.4倍
と、ざっくり覚えておけばよさそうです。
ーーー
実際の文章入力を考えると、かな入力で数字(年齢・日付・人数)や、カッコ()の入力はCaps Lockキーで英数切り替えをするか、[F9] [F10] キーによる英数変換が必要になるけど、上記の検証では数字記号への切り替えについて打鍵数が計算に入っていないので、さらにかな入力の打鍵数が増えます。
他にも、タイプウェルの「カタカナ」で明らかになりましたが、かな入力のほうが不利な文字もあります。
たとえば「じゃ」は、かな入力だとし゛Shiftや4打鍵に対して、ローマ字入力だとJA2打鍵になるので、濁点・半濁点・拗音が含まれる文字はJISかな入力の優位性がなくなります。(タイプウェルのカタカナで不利になることからもわかる)
さらに、かな入力は前述のように打鍵範囲が広く、右手小指の負担が大きく、同指連続打鍵が発生しやすいので、かな入力の打鍵 “速度” はローマ字入力よりも遅くなります。
よって、実際に変換ありの文章を入力する際、JISかな入力速度は、理論的にローマ字入力の1.4倍を下回る可能性が高くなります。
ここで「かな入力のShiftは同時押しだから速度には影響しない」という意見があるかもしれませんが、実際のところかな入力のShift打鍵は同時押しではなく、手前で押す必要があります。
たとえば「きょう」という文字を入力する時、Shiftよの順番で打鍵する必要があり、わずかな差でよShiftの順番になるとミスになってしまいます。
そして次のうを入力するためにはShiftを離している必要があるので、すべて単キー打鍵でロールオーバー打ちできるローマ字入力よりも、かな入力は物理的な限界にぶち当たることになります。
なので、Wikipediaの天声人語を比較したようなShiftカウント無しだと平等ではありません。
そして、たとえShiftカウントあり(総打数)で比較しても、Shift操作が理由で、まだかな入力有利な比較となっています。
天声人語3,735文字(Shiftカウント無し)は正しい比較になっていないので、ブログで引用するなら気をつけたほうがいいと思います。
ーーー
このように、「打鍵数が2倍だからかな入力のほうが速い」という主張は間違いで、
打鍵数だけでもせいぜい1.4~1.5倍程度。かな入力は拗音・句読点・英数字記号でShift・Caps Lockの打鍵数が増え、ロールオーバー打ちできない文字があるので、入力速度の差はそれ以下になる。
ということになります。
しかも高速になるほどShift打鍵のタイミングがシビアになっていくので、速くなるほど差が縮まります。
それに、パソコンを使う上でタイピングのスピードだけじゃなく、業務で使うアプリケーションの使い方や、ショートカットキーを使いこなせるかどうかも重要なので、やはりほとんどの人にとって打鍵数の違いで生産性に2倍の差は出ません。
長くなりましたが、打鍵数の違いについてはここまでです。
疲れやすさ
かな入力派の「打鍵数が少ないから疲れにくい」という主張がありますが、逆にかな入力のほうが疲れやすい点もあるので、図解にしてまとめておきます。
特にかな入力を練習する人は、右手小指を痛めないように気をつけてください。
ローマ字入力・右手小指の負担
ローマ字入力だと和文の入力において右手小指の担当はPーの2キーしかなく、使用頻度も多くありません。
こちらの文字頻度表によると203,984打鍵の解析でPは頻度ワースト4位で約0.2%。※伸ばし棒はデータ無し。
↓また、こちらの100万字分析によるとPー合わせて0.9%しかありません。
それに、Pとーは連続で打つことがないので、同指連続打鍵にもなりません。
ローマ字入力は右手小指の負担が非常に軽いことがわかります。
かな入力・右手小指の負担
それに対してかな入力は右手小指の担当する範囲が非常に広く、かな9文字・濁点・半濁点・伸ばし棒で、合計12キーもあります。
先ほどの文字頻度表を打鍵に分解して集計すると、121,380打鍵のうち右手小指が23,629打鍵で、全打鍵の19.4%が右手小指になっています。
また、100万字分析のほうでは画像の中の小指欄にわが入ってないので微妙に違いますが、上と同じ基準(標準運指)で計算すると、19.0%が右手小指になります)
かなキーが9個もあるので、当然のように同指連続打鍵が発生し、打鍵速度が著しく遅くなることもあります。
かな入力上級者は「ホームポジションの位置を変える」「運指を変える」とアドバイスすることがあるかもしれませんが、教える側も教わる側もさらに負担が増え、学生を含む初心者にとっては現実的ではありません。授業なら統一できなくなります。
そのような欠点があるので、現在すでにかな入力を使っている人も、右手小指の疲労には十分気をつけてください。
ーーー
右手小指の頻度集計には出てきませんが、Enter・バックスペースの負担も重要です。
実際の文章入力では、修正するためにバックスペースを連打したり、変換確定や改行でEnterを使うので、小指の疲れは文字頻度にさらに追加されます。
ーーー
↓こちらは小指を痛めることについて。
自分自身、JISかな入力を練習していて右手小指を痛めました。
濁点の打鍵数が多いのはもちろん、カナ文字の担当も多いので、せれ゛わほへーあたりは薬指も併用しましたが、右側のカナ文字が連続すると小指が避けられず、疲労分散にも限界があります。
ーーー
ほかにも、実際に右手小指に痛みを感じた事例を紹介します。
一旦右手小指が痛くなってしまうと回復までに 1 週間近くかかる上にその間は薬指で代用するなどの対処が必要だが打鍵スピードが明らかに遅くなるしミスも増える。
↑自分も、いったん痛くなると回復が遅くてもどかしかった。小さい力で慢性的に蓄積した疲労は困る。
ーーー
3日間の練習で右手の小指がほぼ死んでしまったので、ちょっと厳しいかなと感じてます。 あと、日常的に使う言葉の中にどれだけ外来語があるのか思い知りました。
↑カタカナ語の入力が多い人はとくに苦労する。
ーーー
一番は濁点符の@だろうか。 どうも僕はまだPと間違う癖があり、 遠いBSも押すことになるから、 濁点を打つのに3打していることも影響している。
↑ただでさえホームポジションから遠いので間違えやすく、バックスペースでさらに小指が増える。
ーーー
「かな入力は打鍵数が少ないから疲れにくい」という主張を見かけても、
- 1日のパソコン使用時間や打鍵数
- 指の強さ(楽器や音ゲーの経験)
- 普段入力している文章の内容
- 使用しているキーボード
- 入力速度
これらによって当然疲れ方も違うので、「◯◯が良い・悪い」と言っている人がいたら、いままでの経験の違いにも影響を受ける、ということは意識しておきましょう。
自分の体験からだと、押下圧30gのキーボード(Realforce108US)にしたときに劇的に疲れにくくなりました。
ローマ字入力で1日5万打鍵以上が当たり前で、10万打鍵を超える日もあっても痛くならなかったほど効果がありました。
しかし、JISかな入力だと、この押下圧30gのキーボードで練習したにも関わらず痛くなりました。
このように人によって全然違うので、少なくとも「打鍵数が少ない=疲れにくい」というのを鵜呑みにしないように気をつけてください。
ーーー
↓続いて左手小指
ローマ字入力・左手小指の負担
ローマ字入力はほぼQキーを使わないので、左手小指は、AZの2キーを使います。
先ほどの頻度表によると、打鍵頻度はA12.3%、Z1.4%となります。(100万字分析のほうはA12.9%、Z0.5%)
Aは母音なので使用頻度がかなり多く、小指があまり強くないと痛める可能性があるので十分に注意が必要です。
ただ、小指連続打鍵になるのはZA「ざ」だけなので、小指を連続で酷使する可能性は低くなっています。
かな入力・左手小指の負担
かな入力は左手小指の担当がぬたちつで、7.3%(8,874÷121,380)となります。
このパーセントはローマ字入力よりも少ないですが、JISかな入力は「ぁぃぅぇぉゃゅょっ」で利用するShiftが8~9%ほどの打鍵数になるので、左Shiftを使う場合は小指の疲労がぐっと増えます。とくに「っゃゅょ」あたりは左Shiftを使う可能性が高くて使用頻度も多いので注意が必要になります。
あと、集計には出てきませんが、Caps Lockキーを英数字の前後で切り替えのために使うので、もう少し増えます。
例:へいせいCaps Lock24Caps Lockねん
また、「タッチ」「~たち」「土」「立つ」「立った」「塗った」など、小指の連続打鍵が出てくると、同じ打鍵数でも疲労が増えることに注意が必要です。
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疲労についてまとめると、右手小指はかな入力のほうが明らかに酷使されるので、痛めないように十分気をつけてください。
左手小指は、文字頻度だけだとローマ字入力のほうが多いですが、かな入力はShift・小指連続打鍵・Caps Lockキー追加分を考慮しておく必要があります。
とくに打鍵数ばかりで比較すると気付きにくいことですが、同じ指の連続打鍵は手や指を上げ下げする回数が増えるので、飛躍的に疲れやすくなります。
また、腱鞘炎や肩こりになる原因は、打鍵数以外にも、キーボードの押下圧・キーボードのチルトスタンド・リストレスト・エルゴノミクスキーボード・手の置き方・肘の位置などによって変わってくるので、「◯◯入力だから疲れやすい」とかんたんに言えるものではありません。
「打鍵数が多いから疲れやすい」というのは、疲れる要因のひとつでしかありません。
ここまで書いてきたようにJISかな入力には、打鍵範囲の広さ・Shift打鍵・同指連続・同手連続・段超えの距離など、無視できない要因があるので、単純な比較はできないはずです。
「入力業務が多くて疲れる」なら、入力方式を変えるよりも、まずはストレッチで筋肉をほぐしたり、押下圧の軽いキーボードを検討してみてください。
入力が直感的かどうか
かな入力派の人が主張することのひとつに、「かな入力は打ちたい文字とキーが一致しているから直感的。ローマ字入力はいちいち頭の中でローマ字に変換しないといけないから直感的じゃない。」というのがあります。
しかし、そもそもローマ字入力で「ローマ字」から「かな」に変換するのは間違った打ち方です。
日本語の文章を入力しようとしているのに、ローマ字を介して打つのは意味がありません。
「か」を入力するなら、
[k]ケー[a]エー ⇒ 「か」
という変換を頭の中でするのではなく、
[ka]という指の動きが「か」という出力と直結するのを最初から意識します。
最終的に指の動きが出力とつながるんだから、アルファベットを覚えてからそれをカナに変換するのは回り道になるだけです。
最初から指の動きを「かな」にひも付けしないといけません。
その原理はこちらの記事でも図解で説明しています。
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また、かな入力でも直感的じゃない文字は存在します。
- 濁音「ぎ」→き゛
- 拗音「きょ」→きShiftよ
- 濁音&拗音「ぎょ」→き゛Shiftよ
たとえば「ぎょ」は発音では1音なのに、かな入力ではき゛Shiftよというふうに、「ぎ」と「ょ」に分解されるし、「きを打った後に濁点」ということになり、発音とはかけ離れた手順で入力しています。
これを直感的だというのは指の一連の動きがひも付けされているからであり、ローマ字入力で指の動きをひも付けしているのと同じです。
一連の動作がひとつの出力と対応していれば、脳のコストは無くなります。
楽器やゲームで、動作の組み合わせがひとつの出力と対応しているのと同じ原理。トランペットはピストンの組み合わせと吹く強さによって音程が変わりますが、いちいち考えながら吹くのは初心者のうちだけです。
「ローマ字入力だと2打、かな入力だと1打」という主張は、「か」~「ん」までの五十音のかな入力にとって都合が良い部分だけしか見てないことになるので、同じ土俵の比較になっていません。
英数字記号の打ちやすさ
「平成29年12月31日」「パソコンにWindows 10をインストール」のような英数字や、!?#$%&()のような記号ありの文章で、かな入力は打鍵数が増えます。
一般的には英数モードに切り替えて、もとに戻すやり方。
具体的にはCaps Lockキーでモードを切り替えます。
例:へいせいCaps Lock24Caps Lockねん
英数字記号が出てくるたびに「左手小指が2打鍵」必要になるので、頻繁だと、それなりの疲労と打鍵数増加になります。
学校の授業や資格試験で入力する文章は日本語中心ですが、仕事だと英語・プログラミング・メールアドレス・URL・日付・価格・商品型番など、英数字記号を入力する機会が増えるので、相対的にデメリットは大きくなります。
外来語(カタカナ語)の入力しやすさ
「ホームページ」「ボールペン」などのカタカナ語は、かな入力だと非常に打ちにくくなります。
(ルール、メール、ロール、レール、セール、ホール、ボール、ポール、ベリー、ペルー、ボム、レベル、ホームページ、ホームルーム、プロポーズ、ボールペン、バレーボール、ベリーロール、ワームホール、など)
なんと言ってもカタカナ語でよく使う「濁点」「半濁点」「伸ばし棒」がすべて小指担当で右端に固まっていて、隣接して誤打しやすいのに加えて、Enterやバックスペースと近く、誤打した時にロスが大きくなるので、これを速く正確にするのは明らかに難しくなります。
「ガー」「パー」のように濁点・半濁点と伸ばし棒が連続する単語も多いので、小指連続にもなります。
これは自分が練習していて実際に感じたことでもありますが、濁点・半濁点・伸ばし棒を間違えたときにバックスペースで修正するとさらに小指(薬指)を使うことになるので、ミスしたときは、弱い指ばかり連続で使うことになります。
濁点・半濁点の誤字脱字しやすさ
たとえばかな入力では「ぼ」を打ちたいときに打ち損じで「ほ」、打ち間違いで「ぽ」になることがありますが、画面上では違いが分かりにくく、変換したときに初めて気付くことに加えて、変換せずにひらがなのまま確定する文章だと気付かないまま進んでしまうので、かな入力はロスが大きくなりやすい仕組みになっています。
これはツイートでも時々見かけますね。
時々「ブ」と入力すべき単語で「プ」と入れられているケースを目にすることがあって、ローマ字入力しか頭になかったので何で打ち間違えるねん!と憤ってたけど、かな入力だと濁点と半濁点のキーが近かったのね。納得。
— みっしー (@missy0x01) November 8, 2018
逆にローマ字入力は「ほ」ho、「ぼ」bo、「ぽ」po のように1打目が離れているので、「濁点・半濁点の有無でミスが起きにくい」=「気付きにくいミスが少ない」という点で、かな入力よりもリスクが少なくなっています。
1万字のかなを入力する場合の打鍵数によると、かな入力では濁点キーが約10%もの割合になり、しかもホームポジションの外側にあるので打ち間違う可能性が若干高くなるので、誤字脱字のチェックでは濁点の有無をよく確認しなければいけません。
とくに濁点「ぼ」⇔半濁点「ぽ」の打ち間違いは、フォントが小さいと非常に見分けがつきにくいので注意が必要です。
割合(シェア)
ローマ字入力とかな入力のシェアにどのような違いがあるのか、以下の資料をもとに考察しました。
- 調査会社やWebメディアが実施したアンケート調査
- 独自で行っているYouTubeやTwitterのアンケート調査
- イータイピングのランキング参加人数
- 高校で取られたアンケート
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アスキーのアンケート調査の記事によると、2015年に週アスPLUSがこのページで募集した1529人の調査結果が以下のとおり。
結果は93.1%が“ローマ字”で、“JISかな”は5.1%しかいない。世代別に見ると20代は96.3%が“ローマ字”で、ほとんどローマ字しかやっていない
同記事内で書かれている、2007年・楽天リサーチ社が全国3,000人に聞いたものだと以下のとおり。
’07年に楽天リサーチ社が全国3000人に聞いたものがあるが、“ローマ字”86.3%、“JISかな”7.6%、“親指シフト”は0.7%
また、自分のYouTube動画でもアンケートを取っています。(2016年5月~2018年11月 2,800人)
※ただしこのアンケートは実際とは違う可能性が高いのであまり確実ではありません。
※あとで問題点が浮き彫りになりましたが、パソコンとスマホを明確に切り分けないと、このアンケートには意味がありません。
スマホ世代が多くなった現在、すでに「かな入力」はフリック入力のことだと思っている人がいます。
あとで解説しますが、パソコンとスマホを切り分けたアンケートではかな入力は 2%前後しかいません。
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↓上記3つのアンケート結果を大雑把にまとめてみます。
楽天 | 週アス | YouTube | |
日付 | 2007年 | 2015年1月 | 2016年5月~ |
投票数 | 3,000人 | 1,529人 | 2,800人 |
ローマ字入力 | 86.3% | 93.1% | 88.0% |
かな入力 | 7.6% | 5.1% | 8.4% |
親指シフト | 0.7% | 1.2% | 2.0% |
その他・不明 | ? | 0.8% | 1.6% |
Twitterで入力方式に関するアンケートをときどき見かけますが、
- 投票数が少ない
- フォロワー内容やRTによって回答者の属性が偏る可能性が高い
という点で、ほとんどすべてのTwitterアンケートは統計的に信頼性が低いので、参考情報として引用する場合も気をつけましょう。
今まで見かけたことがあるTwitterのアンケートでは、以下のものが17,404票とダントツで多かったです。
- ローマ字入力 89%
- かな入力 11%
- ※親指シフトなどは選択肢にない
【拡散希望】アラビアのコに「日本人の95%以上はローマ字入力してると聞いたけど本当?」と聞かれたのでアンケートにご協力ください。PCキーボード入力時、ローマ字入力・かな入力どちらを使ってますか?
— 鯖野 (@belegroth) March 27, 2016
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↓1,641票のものもありました。
- ローマ字入力 90%
- かな入力 6%
- 両方 2%
- フリック 2%
パソコンで 絶滅寸前の「かな打ち」の種族はどれくらいいますか?
私は「書院」からの生き残りで、その流れでかな打ちします。
その方が打つの早いから…
ただmacは色々と言うことを聞いてくれないのでそっちではローマ字打ちをモタモタとしています。— 火ノ鹿 たもん (@Tamon_Hinosika) October 11, 2018
あと、回答者は「Twitterアカウントを持っている」という時点で、世間一般よりもITリテラシーが高いとか、SNSへの抵抗がない人たちの可能性が高くなるので、それも頭に入れておきます。
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アンケートのサンプル数と正確性について調べてみたところ、だいたい400人だったら誤差5%以内になる、というのを見かけますが、調査したい母集団からピックアップした回答者という前提なので、Twitterアンケートだとツイート主やRTした人のフォロワー属性の影響を受けるため、数百人の回答者だとまだまだ誤差が大きいでしょう。
その意味では上記Twitterアンケートのように1万人を超える圧倒的な回答者数や、楽天リサーチのような業者が実施するアンケートのほうが信頼性が高いと言えます。
入力方式に関してのTwitterアンケートは400人に届かないものばかりなので、データを信用したり引用したりしないように気をつけましょう。
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あと、重要なポイントとして、「かな入力=フリック入力」と思っているユーザーが存在します。
実は、キーボード入力の経験が無かったり、キーボードのJISかな入力を知らないスマホ世代にとっては、
- 「かな入力」=スマホのフリック入力
- 「ローマ字入力」=スマホのローマ字入力
と認識しているツイートを、何度も見かけたことがあります。
↓また、JISかな入力の存在を知らない人も当然のようにいます。
本日の仕事のハイライト
私
「ローマ字入力に慣れちゃってるからかな入力の方のPC触ると慌てちゃうんですよねー。」同い年の社員さん
「わかりますー。一通り習ったけどかな入力は覚えられないですよね。」それを聞いてた歳下の社員さん
「かな入力ってなんですか?」「「?!」」
— 珠洲 (@suzumokuren) June 28, 2019
そのため、これから先、
Twitterアンケートの「ローマ字入力とかな入力どっち?」
という質問では、あいまいで不完全なアンケート結果になってしまう可能性が高いので、十分に注意してください。
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実はこのパソコンとスマホの違いを明確にしたアンケートでは、(パソコンを持っていない人を除いて)JISかな入力は 1.4%(20 ÷ 1396)しかいません。一方、ローマ字入力は 96.8%(1352 ÷ 1396)。
回答者はスマホ視聴者が中心で、年齢層は多い順から
- 18~24歳(43.6%)
- 13~17歳(24.7%)
- 25~34歳(16.6%)
という構成で、中高生・大学生・若い社会人が85%を占めます。
このように、若い世代のJISかな入力者はほとんどいない可能性もありえます。
おそらく、現時点ですでに「かな入力」はJISかな入力として認識されておらず、フリック入力と混ざってしまっているので、アンケートを実施する場合は、明確にパソコンとスマホを分けましょう。
このように、母集団の選定・質問の仕方・実施年度の古さ、などの理由によって、アンケート調査はデータの信頼性を保つが難しい手法だといえます。
ーーー
なので、そもそもアンケートではなく、「データが常に最新・参加人数が多い・学生から社会人まで利用者の幅が広い」という特徴を持つ、イータイピングのランキング参加人数を集計したほうが、アクティブなユーザーのシェア調査として適していると思います。
↓以下、2020/6/23のお題から、過去20回分の人数比を集計しました。
2020年 | ロマ | かな | ロマ% | かな% |
6/23 | 6418 | 74 | 98.9% | 1.1% |
6/16 | 7148 | 73 | 99.0% | 1.0% |
6/09 | 6799 | 89 | 98.7% | 1.3% |
6/02 | 8109 | 84 | 99.0% | 1.0% |
5/26 | 7949 | 77 | 99.0% | 1.0% |
5/19 | 7934 | 84 | 99.0% | 1.0% |
5/12 | 7209 | 61 | 99.2% | 0.8% |
5/05 | 8067 | 68 | 99.2% | 0.8% |
4/28 | 8522 | 85 | 99.0% | 1.0% |
4/21 | 7405 | 66 | 99.1% | 0.9% |
4/14 | 6952 | 72 | 99.0% | 1.0% |
4/07 | 6023 | 77 | 98.7% | 1.3% |
3/31 | 6066 | 66 | 98.9% | 1.1% |
3/24 | 4735 | 59 | 98.8% | 1.2% |
3/17 | 4317 | 49 | 98.9% | 1.1% |
3/10 | 4045 | 52 | 98.7% | 1.3% |
3/03 | 4476 | 55 | 98.8% | 1.2% |
2/25 | 4533 | 54 | 98.8% | 1.2% |
2/18 | 4137 | 55 | 98.7% | 1.3% |
2/11 | 4094 | 52 | 98.7% | 1.3% |
合計 | 124938 | 1352 | 98.9% | 1.1% |
- ローマ字入力 98.7%~99.2%
- JISかな入力 0.8%~1.3%
という結果になりました。
※ただ、上記期間はコロナの影響によってローマ字入力参加者が増えて、かな入力の割合がやや低めに出ているので、一応e-typingの第1回(2012年4月)から430回分をすべて調べたところ、かな入力ユーザーの割合はだいたい1~2%前後で推移しているようです。
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そして、ここまではネットで取られたアンケートや登録人数から予想をしましたが、実際に高校生への調査では、学生は720人全員がローマ字入力、教職員70人の中で1人だけJISかな入力という結果になっていました。
本校生徒(15~18 歳、約 720 名)を対象とした調査では、100%がローマ字入力であり、教職員(22~65 歳、約 70 名)でも JIS かな入力はたった 1 人であった。
720人に調査して1人もいなかったので、どこまで少ないのか予想ができませんが、社会人を含めたe-typingで1~2%ということから考えると、高校生のJISかな入力者は、多く見積もって1%未満になるんじゃないかと予想しています。
学校のキーボードについて
このように、シェアに関しては、もはや「ローマ字入力が圧倒的」という状況なので、学校のタイピング授業はローマ字入力が前提で進められ、小さいころにかな入力をやっていても、どのみちローマ字入力も練習せざるを得なくなります。
おまけに、学校の授業では、デスクトップパソコンではなくタブレット・ノートPC・Chromebookを利用するのがスタンダードになります。
自治体向けのGIGAスクール紹介ページを見ると分かりますが、iPad・Windows PC・Chromebookしか選択肢がないので、これからデスクトップが増えることはありません。
↓この章は、「子どもにローマ字入力とかな入力どっちを覚えさせればいいの?」と迷っている保護者向けになると思います。
iPadのJISかな入力対応について
iPadは、昔からずっと
- Apple純正キーボードだけがJISかな入力できて、
- サードパーティ製のJISキーボードはUS配列として認識されるためにJISかな入力ができない
という問題を抱えていましたが、iPad OS16.1のリリースにより、ついにサードパーティ製もJISキーボードとして認識されるようになったので、この問題が解決しました。
設定の「一般」→「キーボード」→「ハードウェアキーボード」の中にある以下の項目を変更してください。
- 「Keyboard Type」→ JIS
- 「日本語ーかな入力」→かな入力
これによって、学校がよくわからずにサードパーティ製のJISキーボードを導入しても、問題が起こりにくくなったと思います。
↓こちらの記事によると、有線接続もBluetooth接続も問題がありません。
参考:iPadに日本語WindowsキーボードをつないでJISかな入力(ローマ字入力の情報もあり) | むーなかのお知らせ
ローマ字入力とJISかな入力の切り替えは、設定画面に移動しなくても、入力画面のまま簡単に切り替え可能なので、切替方法さえ周知できていれば、一応共用も可能だとは思います。
以上、iPadでJISかな入力の対応がかなり改善されたことについてまとめでした。
以前はサードパーティ製に対応できないのが理由で、かなり否定的な意見を書いていましたが、劇的に状況が良くなりましたね。
Chromebook
ChromebookもGIGAスクール構想によって導入が増える見込みです。MM総研の予測を見ても、2020年から出荷台数が増えます。
GIGAスクール構想の仕様書どおり、5万円前後の予算から考えても、Windows PCよりChromebookのほうが強い。
↓Chromebookのメリット解説や導入事例。
参考:Chromebook の特徴と学校教育での使用が推奨される理由|Chromebook 活用によるICT教育支援の MASTER EDUCATION
参考:[かぶ] 教育現場にChromebookを導入するメリットは「Chromebookや特定の端末、OSに縛られない」ことだと思っています。
参考:公立学校の導入が急増するChromebook、埼玉県は県内の高校35校に導入 | 日経 xTECH(クロステック)
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で、肝心の、ChromebookでJISかな入力できるかどうかですが、たとえば「Chromebook でのかな入力の設定方法|HP」とかを見ると、JISかな入力への変更は普通にできるようです。
「JIS配列かUS配列か」についても、幸い、GIGAスクール構想の標準仕様書では「Bluetooth接続でない日本語JISキーボード」とされています。
(※ただし、「US配列のほうがより安価に調達できる場合はUSに変更しても良い」とも書かれているので、JIS配列で確定しているわけではありません。)
となると、残る問題は本体のサイズで、「GIGAスクール自治体ピッチ紹介ページ」では11.6インチのChromebookがもっとも多くラインナップされているので、「全体的にキーサイズが小さい」もしくは「右側のレイアウトが犠牲になる」のどちらかになります。
その両方が見れる例として、「[かぶ] DELL Chromebook 3100 2-in-1 Educationレビュー。耐衝撃性に優れ、目立った欠点のない学校向け国内現行2-in-1モデル。[PR]」を見てみると、全体を16.5mmキーピッチに縮めれば、不自然なレイアウトにしなくて済むようです。
しかし、同じく記事中で紹介されているC204MAだと、伸ばし棒とEnterが犠牲になっているので、非常に打ちにくいことがわかります。つまり、自治体が採用する機種に左右されます。
ということでまとめると、学校で採用されるChromebookは本体サイズが小さいので、右側のレイアウトが犠牲になるかどうかで使いやすさが決まる、という感じです。
Windows PC
JISかな入力できるかどうかはChromebookとおおむね同じなので割愛しますが、Windows PCは10.1インチと11.6インチの選択肢が多く、むしろChromebookよりもJISかな入力しにくい機種が多い可能性があるんじゃないかと思います。
機種を自分で選べない
予算が安いということもあり13インチ以上は少なく、11.6インチだと、JISキーボードの右側は部分的に小さくなり、JISかな入力では入力しにくくなります。
学校で使用するキーボードについては、採用機種以外選べないので、使いにくいキーボードだったら、どうしようもありません。
たとえば最初はJISかな入力が使えていても、中学→高校と進んだときに採用機種が変わったら、どうしようもなくなるかもしれません。
それでも自力解決、もしくは親がサポートできるならいいですが、子どもがJISかな入力を習得するというのは、ここまで説明してきたことを踏まえると、さまざまな面でコストがかかるということを理解しておかないといけません。
これらのデメリットやリスクを理解した上で、自分でJISかな入力を選ぶのなら問題ありません。
職場の共用パソコンでのトラブル
社会人が気をつけないといけない点として、職場の共用パソコンでは、かな入力からローマ字入力に戻す癖をつけておかないとトラブルにつながります。
これに関しては個人的に全然迷惑には感じないですが、世の中には迷惑に感じる人や、かな入力の存在を知らない人もいて、Twitterで検索すると実際に職場で起こっているトラブルがあったり、人間関係にストレスを溜めている人がいるようです。
Twitter検索「”かな入力” OR “かな打ち” 共用 OR 戻さない OR 戻して」
検索結果を眺めると、残念ながら、やっぱりかな入力の肩身は狭い、という印象がします。
入社した方がかな入力の方。教育担当「ウチではローマ字でやってもらう。かな入力はダメ。ローマ字入力覚えろ」。その方、研修中に去った。かな入力とローマ字入力の切り替えは簡単に出来ることを知らない無知な担当のせいで1人消えたと言う酷い話。社名晒したい。
— ❤XJAPAN❤ナッツ🤗 (@rLVtlS58gG2PVcy) November 29, 2019
私もひらがな入力🎶
職場でひらがな入力すると超キレられた😱
かなキー1つで切り替え出来るのに…あり得ない程怒られた😭
アルファベット入力する人は切り替え知らないの❓
一応ひらがな&英字の両方ブラインドタッチ出来る。
河野大臣がひらがな入力なんだから、職場でのかな入力を認めるべきだよね❗️— みちか (@sakura_michika) November 28, 2019
かな入力派の皆さまへ
もし、職場の共用PCを使うことがあったら、可能な限り終了時にローマ字入力に戻していただければ幸いです。
時折、かな入力からローマ字入力に戻す方法を知らないローマ字派が「PCが変だ!」とパニックになり、周りを巻き込む事例があります。よろしくお願い申し上げますm(_ _)m— ruby (@ruby_green) January 30, 2018
共用PCでかな入力に設定変更したあと元に戻さないで帰ったパートさんに社員が火を吹いてる。誰も元に戻せないらしい…(°Д°)ウソダロ
— kai (@kai_pigret) June 18, 2015
職場でよく共用のパソコンをかな入力にしたままで怒られる 今日もまた怒られた(´・ω・`)
— ジェイ@ゲーム制作VTuber (@JY20160816) April 25, 2017
会社ではローマ字入力、おうちではかな入力を使い分けてる。器用やね。とは時々言われる。だって会社の共用PCをかな入力にしてたら他のみんなにおこられちゃうんだもん
— 十錠らぴす (@Lapis_as_Eiki) March 6, 2015
かなキー入力だとバレると取り繕うように「でもカナキー入力は早いでしょ」と言われるが「かなキー入力のママにしてしまって怒られる事のほうが多いです」と答えることにしている。ぶっちゃけ褒められるより、怒られることのほうが多いよねかなキー入力。
— 地雷魚 (@Jiraygyo) January 12, 2021
もちろん、ネット上には表面化した例が目立っているだけかもしれませんが、そういうトラブルが実際に起こる可能性はある、ということは意識しておいたほうがいいと思います。
職場のタイピング音がうるさい問題と似ていて、なかなか直接言わずに不満がたまり、突然爆発することも考えられるので、「普段からローマ字入力に戻さないかな入力の人」は、一度、まわりの様子を見てみましょう。
もちろん「かな入力が悪い」ということではないです。そもそも認識のスタート地点が違うと思っておけば、多少は気持ちも落ち着くんじゃないでしょうか。
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これらは根本的に、「ローマ字入力の人が切り替え方法を知らないだけ」なので、どちらが悪いという話じゃないはずです。
そのようなことがあったときに、ローマ字入力の人は切り替え方法を知っておけば困らないし、かな入力の人はそのようなトラブルが起きないように、元に戻す癖をつけておけばいいはずです。
お互いに気配りがあればトラブルまで発展しないはずなんですが、人間関係によっても変わるでしょう。
ただ、気配り以前に、若い人はJISかな入力の存在自体を知らない可能性があって、30代でもかな入力の存在は知っていてもよく分かってない人が実際にいるので、「かな入力を知らない人がいる」という意識を持っておいたほうがいいです。
↓こちらは誰もローマ字入力に戻すやり方を知らず、検索もせずに大騒ぎしていたという例。
昔派遣社員で働いてたとき、客先のパソコンをローマ字入力からかな入力に変えて、そのままにして帰ったら、誰一人ローマ字入力に戻せなくて大騒ぎになってたときはびっくりした。ググれよ…………。
— ひらまお (@JOHNNY423) May 25, 2019
「自分が知っていることはみんなも知っている」という思い込みはトラブルの元です。
さらに上記のように「調べれば(Google検索すれば)わかるだろ」というのが通用しない人も(実際はかなり)います。
※自分も会社でパソコンサポート的なことをしていたから痛感しますが、覚えない人は永遠に覚えません。
ローマ字入力とかな入力の切り替え方法を素直に聞いてくれればいいですが、不満を言われることもあるでしょう。
また、共用PCを使う人数が多ければ、切り替えを周知させるのも面倒になってきます。
そのため、「なんでかな入力が迷惑なんだよ!おかしいだろ!」と正当性を主張すると、そもそも切り替え方法を知らない人に余計に煙たがられ、逆に人間関係に支障をきたすかもしれないので気をつけてください。
それが正しいことだとしても、お互いの主観が違うので理解されないこともあります。
かな入力を使っている人にとっては不本意ですが、「周りの人はだれもかな入力のことは知らない」くらいのつもりでいたほうがトラブルが少なくなると思います。(実際、後述するアンケート結果を見ると、本当に誰も知らない可能性も高いです)
例として、医療機関の事例を引用します。
昔勤めていた会社は自分専用のパソコンがあったので、そこでは何も困ることはありませんでした。
が、医療事務の職に就く為に通った職業訓練校の先生に、ローマ字入力に変えるよう強く勧められました。
理由は、医療機関では、一台のパソコンを複数人で共有して使う為、その度にモードの切り替えをしなくてはならない、切り替えをし忘れると他の人に迷惑をかけるからとのことで、深く納得しました。引用:パソコン入力…ひらがな入力はマズい?? (2) : キャリア・職場 : 発言小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
たとえばカルテの入力で突然かな入力になっていて、切替方法がわからず、かな入力をしていた人が離席していたら仕事がストップしてしまうので、迷惑だと強く感じてしまう場合もあるんじゃないでしょうか。
ーーー
自分の経験からひとつ書いておくと、3箇所の営業所をほぼ日替わりで出勤し、共用のパソコンを次々と現場スタッフが使うようなときがありました。
(誰もかな入力者はいなかったですが)もし1人でもいたら、切り替え方法を知らない人や、年配でパソコンアレルギーな人もいるので、できる人になんらかのしわ寄せ(人が入れ替わるので口頭で教えてもキリがなく、マニュアルを作ったり)は発生しただろうと思います。
ーーー
また、例は少ないですが、就職に不利になるという意見もあります。
高校のときのタイピング検定でも、かな入力で受けて合格しました が、かな入力ってキーボード設定を日本語に変えるから、不特定多数と使用するパソコンには向かないので就職に不利 と言われていました。
でも今もまだたぶんこれからもずっと大切にしていきたい かな入力— ウ エ オ (@T_Owatari) November 27, 2018
ハロワで、かな入力の人は嫌がられますとハッキリ言われました。離席する時ローマ字入力に戻さないとかトラブルも多いと。悩んでると相談したらそう返されたくらいなんで、そういう申し出する企業さんは多いのだろうと推察しました。
— 洗い熊 (@sub_racoon) January 13, 2019
↓こちらは派遣のスキルチェックでローマ字入力しか受け付けていなかった例。
私「普段かな入力でしています。かな入力でのタイピングテストはできませんか?」
人材派遣会社「企業ではローマ字入力なので。そのままやって。」正直、ここまでかな入力が追い込まれているとは思っていなかった。他人が習熟済みのやり方を「直せ」ってかなり傲慢じゃないだろうか。
— MiMiMi @9m (@po___qo) February 3, 2020
IT系とか事務メインの派遣会社に登録しに行くとタイピングのテストとかあったりするの。んで、漏れなくローマ字入力しか対応してないのよ。かな入力なんですよねって言うとびっくりされてしまう。ローマ字入力できなくはないけどやっぱ速度は落ちるね。
— こいわい☃️みうら (@miura84) April 20, 2019
↓面接の入力テストで、そもそもJISかな入力が想定されていなくて面接官が戸惑ってしまった例。
かな入力に変えていいですか?って質問したら、面接官2人(若い)が「え?!どうしよう…」ってすごく狼狽えてて…なかなか決断してくれなかったので、「変なこと言ってすみません。ローマ字入力でやります…」っ言っちゃったんですよ。
世の主流はローマ字入力だから、この機会に真面目にやります…— めるも (@gap_moe_shoma) December 1, 2021
↓職場によっては最初からかな入力への変更が禁止されている例もあります。
私の仕事先のパソコンはローマ字入力のみで、ひらがな入力への変更は禁止されています(ローマ字入力が標準なのにひらがな入力に変える人がいて、迷惑だからと禁止になりました)。
↓こちらは過去にトラブルがあって、採用する側として難色を示す事例。
私が採用する側だと(そのような経験があるので)かな入力者だった場合は少し身構えてしまいます。
新入社員がパソコンが全然使えない人(白紙の状態)の場合、絶対にローマ字入力を覚えてもらいます。入力速度よりも人間関係のほうがはるかに大事ですから。
そのくらい、共用パソコンを使う仕事だと、かな入力者がいることそのものがリスクになってしまいます。かな入力が得意な方には申し訳ないですが、かな入力自体が歓迎されない場所もあるのです。
※ただし、あくまで職場環境・人間関係に左右される問題なので、すべての職場がダメ、ということではありません。あくまで検索した限りの事例として読んでください。
会社支給のパソコンがUS配列
JISかな入力は一応「JIS規格」なので、IMEに搭載されてないことはありません。
しかし、キーボードがUS配列の場合はJISかな入力がまともに使えません。
JISかな入力ユーザーがわざわざUS配列のパソコンを買うことはありませんが、会社支給パソコンがUS配列だったらどうしようもありません。
パソコン音痴の彼氏が会社から付与されてる仕事用パソコンが壊れて新しいものが届いたのだけど、国内メーカーから和順とかいう格安パソコンに変わり困ったことが1つ。
かな入力で「ろ」が入力できない😂半角/全角キーのところに「ろ」が刻印されてるけど半角/全角切り替えしか機能しない。 pic.twitter.com/3ZKgpmCqRD
— やっこ野郎 (@yakkoyarou) January 21, 2022
USBキーボードを接続すればJISかな入力できるかもしれませんが、仕事なら持ち運ぶ可能性も高いため、外付けキーボードは解決策にならないかもしれません。
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会社の専用ソフトで不具合
会社が独自で使用している専用ソフトで、JISかな入力が大変不便な状態になった例もあります。
かな入力モードをオンに設定したのにも関わらず入力する項目が変わるたびにかな入力モードがオフになってしまうんです。
事実上、ローマ字入力でしか仕事ができない状態になってしまうので、考えられる対応としては、
- ローマ字入力を新たに習得する
- ソフトウェアをアップデートしてもらう
この2通りがあるわけです。
②は追加のコストがかかる可能性があるので、要望が通るかどうかは、いろいろな条件や思惑が絡みそうです。
どちらにしろ、上記引用先の方のように、事情を説明して、お互い納得いく案を探るのが重要だと思います。
ChromebookのJISかな入力不具合
たとえば、Chromebook(クロームブック)のアップデートにより、JISかな入力が使えなくなることが、たまにあります。
Chromebook、今度はアップデートで「かな入力」が出来なくなってるのかぃ。日本語入力の不具合は4~5年前から度々起きてるな(この前もあったよね)。普及以前ならまだしも、今はかなり影響大きいと思うよ。Googleも本気で日本進出考えるなら、これ本気で取り組まないとみすみすチャンス逃すよ。
— おふぃすかぶ.jp (@OfficeKabu) July 24, 2020
参考:[かぶ雑感] Chromebook(Chrome OS 84.0.4147.94)で「かな入力」が出来なくなった場合の対処法(2020.7.24)。
Chromebook最新Stable版で、かな入力バグが報告されてるhttps://t.co/Vv1UlClLjC
去年もかな入力にバグがあったhttps://t.co/rUYomsxs6p— ハタナカ (@staddss) July 24, 2020
↓リンク先の記事や、他の参考記事。
2019/5/13:962391 – Japanese Keyboard Kana input method doesn’t work as expected. – chromium
参考:日本語入力の際、「わ」の文字が入力できない – Chromebook Community
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あくまで一時的なもので対処法もあるようですが、ある日突然使えなくなるのは結構ストレスがかかるので、ChromebookでJISかな入力するなら、ある程度の覚悟が必要です。
MS-IMEのJISかな入力不具合
2020年12月のWindowsアップデートにて、Microsoft IMEでかな入力に不具合が発生しました。
参考:2020年12月のWindows Updateで「かな入力」に問題が起きたときの対処法
一応前のバージョンに戻すことによって一時的に回避することができましたが、自動的にお知らせはされないので、ある程度の自力解決が求められます。
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ソフトウェア、ブラウザ、OSいずれにも言えることですが、JISかな入力の動作検証はきちんとされていないのでは?という印象をどうしても持ってしまいます。
ローマ字入力とかな入力が混ざる問題
個人差がありますが、ローマ字入力とかな入力を両方やった結果、打ちたいキーが混じってミスしてしまう、ということがあります。
たとえば自分はかな入力を練習した結果、「し」を打とうとしてsiではなくし(アルファベットの D)を打ってしまうようなミスが発生するようになりました。
これは『「し」「す」「と」』のように、ひらがな1文字を記載しようとするときに発生することが多く、かな入力の習熟段階が1文字ずつ認識していることが強く影響してしまっています。
個人的にはこのレベルで中途半端に習得するよりも、かな入力の練習をやらないほうがマシでした。
他にも左右反転・隣接によって混ざることなど、体験談が参考になる記事があります。左右盲についても言及されています。
参考:「かな入力」に挑戦!の、その後|柏木 亜希 ✤Healer作家✤ アートと地球と|note
↓こちらは「あ」と「A」の混乱。
参考:かな入力を使い始めて3ヶ月が経ちました – つよみーのブログ
↓Twitterで見かけた例。
ローマ字変換に戻したらめちゃくちゃブラインドタッチしやすいけど、かな入力のクセが残ってて濁音打つときも後から濁点打つつもりで清音打っちゃうし、句読点うとうとしてシフト推してしまう。
あとなんかローマ字とかなのgoogleIMEは変換機能がどちらも一長一短ってかんじよね— かさばり (@bulky_qm) September 9, 2019
自宅のMyPCキーボードは10年くらい"かな入力"、学校、会社は"ローマ字"入力でどちらの入力方式でも難なく打てるんだけど、2ヶ月自宅PCいじってなかったら、かな入力とローマ字入力が混ざるww 感覚がまだ戻ってない。
— クマくま (@tarutaruYukke) May 5, 2012
690文字のパソコン入力時間。
左がローマ字入力、右がかな入力。
かな入力は未だC判定だけど、ローマ字入力がかなり遅くなったこともあって近づいてきてる。ローマ字とかな入力が混乱しまくる… pic.twitter.com/6CUklxw7JA— 狂いもの (@kurui_mono) January 23, 2022
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かな入力対応のタイピングソフト
実務のタイピング練習にはあまり関係ありませんが、かな入力に対応しているタイピングソフトは少なめです。
また、学校の授業でローマ字入力しか対応していない寿司打が使われるなど、最初からかな入力が使えないことがあります。
※YouTubeのコメントやTwitterで実感しますが、おそらく学校の授業で最も使われているテストは寿司打です。
次に多いのはたぶんイータイピングで、こちらはかな入力があるので使えるかも。
また、先ほど書いたように、派遣のスキルチェックではローマ字入力しか許可されてないことがあります。
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そんな感じで、シェアが少ないゆえの不便さがあるので、かな入力に興味を持っている人は事前に知っておいてください。
ローマ字とかな入力どっちが速いのか
ローマ字入力とかな入力、極めるとどちらが速く打てるのか。
よく耳にするのは「かな入力は半分の打鍵数だから2倍速い」というものですが、これは正しくありません。
↓1万字のかなを入力する場合の打鍵数から引用すると、
- ローマ字入力17,019打鍵
- かな入力Shift無し11,169打鍵(動作数) → 1.52倍
- かな入力Shiftあり12,256打鍵(総打数) → 1.39倍
上記のように、まったく同じペースで打った理論値でも1.52倍の速度で、これにさらにかな入力のほうが速度を上げにくい要素があります。
それはローマ字入力になくて、かな入力にあるもの、Shift押さえながらの打鍵です。
かな入力では「っぁぃぅぇぉゃゅょを、。」を入力するときにShiftキーを押さえながらの打鍵が必要で、Shiftキーを押しているか離しているかの打ち分けが必要になるため、スピードが上がるほど難しくなります。
たとえばかな入力できょう、を打つなら
- きShift押・離どちらでもOK
- ょShift押
- うShift離(押すと小さいぅになってしまう)
- 、Shift押
のようになるので、「押・離」判定を正確にする必要があり、連続打鍵するだけのローマ字入力よりも高速打鍵が難しくなります。
ローマ字入力は、和文だとすべて単打で入力できる(キーを離したかどうかを気にしなくてもいい)、いわゆるロールオーバー打ちができるので、高速タイピングになっても、かな入力よりも速度を上げやすいというメリットがあります。
その仕組み上、高速になればなるほど、同じスキルなら両者の差が縮まっていき、それが個人スキルの差なのか、配列の差なのか分からなくなります。
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実際に、日本トップレベルのタイパーが参加する大会で分析します。
※先ほどの動作数の差とShiftの難易度を考慮して、係数としては1.5倍が妥当で、Realforceの大会でも、かな入力のスコアを1.5倍にしてポイントが計算されています。
勝敗の決定方法 : トータルポイント(※かな入力の場合は係数1.5倍)
↓それを踏まえてRealforceチャンピオンシップ(RTC)2017の予選結果を分析した結果がこちら。数値はイータイピングのWPM(1分あたりの打鍵数)です。
※予選申し込み人数はローマ字入力247人、かな入力14人(5.3%)
方式 | かな入力 WPM |
ローマ字換算 WPM |
ローマ | 851.09 | |
かな | 545.13 | 817.70 |
ローマ | 760.34 | |
ローマ | 752.86 | |
ローマ | 741.09 | |
ローマ | 739.84 | |
ローマ | 739.21 | |
ローマ | 729.06 | |
ローマ | 724.57 | |
ローマ | 716.73 | |
ローマ | 715.09 | |
ローマ | 714.68 | |
ローマ | 710.74 | |
ローマ | 709.65 | |
かな | 466.41 | 699.62 |
ローマ | 699.00 | |
ローマ | 693.24 | |
ローマ | 689.74 | |
ローマ | 686.18 | |
ローマ | 683.85 | |
ローマ | 676.78 | |
かな | 450.22 | 675.33 |
ローマ | 670.88 | |
ローマ | 670.75 | |
ローマ | 669.83 | |
ローマ | 669.54 | |
ローマ | 665.98 | |
ローマ | 663.31 | |
ローマ | 659.19 | |
かな | 438.69 | 658.04 |
かな入力が上位を独占することはなく、トップ同士のローマ字換算WPMは近くなっています。(ただしトップはタイパーから見てもとんでもないスコアなので、全体の分布を見てください。)
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↓そしてこちらは2018本戦の各選手のKPM(1分あたり打鍵数)を平均した数値。(※大会の順位ではなく、ローマ字換算KPMが速い順)
方式 | かな入力 KPM |
ローマ字換算 KPM |
かな | 662 | 993 |
ローマ | 986 | |
かな | 623 | 934 |
かな | 617 | 925 |
ローマ | 842 | |
ローマ | 836 | |
かな | 541 | 811 |
ローマ | 789 | |
ローマ | 774 | |
かな | 515 | 772 |
ローマ | 770 | |
ローマ | 741 | |
ローマ | 725 | |
ローマ | 721 | |
ローマ | 720 | |
ローマ | 712 |
※本戦ではWeatherTypingというソフトが使用されるため、先ほどの予選スコアとは基準が違います。
本戦は事前にワードを練習することはできますが、ランダムなパターンから出題されるぶっつけ本番なので、より実践に近い数値となっています。
ローマ字換算だとかな入力が上位に多くなっていて、トップ同士のKPMは僅差になりました。
ちなみに優勝したmiriさんは2番目の986KPM、準優勝のmullerさんは3番目のローマ字換算934KPM。一番上のテルさんはmiriさんに惜しくも破れましたが、ローマ字換算KPMではトップでした。
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↓RTC2017の決勝戦。ローマ字入力 VS かな入力。
ローマ字のmiriさんが優勝しました。
↓RTC2018でもmiriさんが優勝して2連覇しました。
↓RTC2019もmiriさんが優勝して3連覇しました。
もちろんローマ字入力のmiriさんが3連覇しているからといって「ローマ字入力のほうが優れている」と言いたいわけではなく、かな入力の選手とも激戦を繰り広げているので、少なくとも入力方式の違いによって圧倒的な差はつかないということです。
競技レベルでは質の高い練習をどれだけできるかのほうがよっぽど重要でしょう。miriさんのインタビューや、U-22部門優勝のはやとぅ!さんの昔の練習記などを見ると、配列の良しあしの材料とするには申し訳ないくらいの取り組みです。
たとえば同程度のスキルを持った選手で対戦して、1.5倍の差が出てしまうほど配列自体に圧倒的な差があったら、同じワードを入力するWeather Typingで勝てるわけがありません。
机上の空論で打鍵数の比較だけするよりも、同じワードを入力する異種格闘技戦の結果のほうが、よっぽど公平な比較になるんじゃないでしょうか。
その意味では、毎年激戦が繰り広げられるREALFORCE TYPING CHAMPIONSHIPを見ていると、高速入力としての評価ではローマ字入力とJISかな入力は拮抗していると思います。
ただ、公平な比較と書きましたが、タイピングソフトでは、実際の文章入力と決定的に違う点があることに注意が必要です。
↓たとえばWeather Typingで英数字ワードが出題された場合、
- 上空4000メートルにて
- BGMは
- 出でよ!
本来のJISかなによる文章入力ではアルファベット・数字・記号の前後でCaps Lockキーによる切り替え(前後で2打鍵)が必要ですが、タイピングソフトによっては切り替えが必要ないものがあります。
なので、JISかなで「じょうくううううわめーとる」になる入力が、勝手に「じょうくう4000めーとる」にしてくれることになり、相当かな入力有利な処理になっています。
REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIPは全国トップレベルの大会ですが、本来の文章入力とは違う条件での比較になることは知っておかないといけません。
ほかにも、ローマ字入力とJISかな入力を比較する場合は、
- どのようなタイピングソフトを使うのか
- 漢字変換ありなのか
- 英数字記号はどのくらい含まれるのか
などによって、結果が変わってきます。
つまり、どのように比較するかによって、いくらでも都合のいい答えを作り出すことができるので、「2倍速い」のように、ひと言で表現できるものではありません。
ーーー
余談として、筆者はローマ字入力で上記のmiriさんの半分くらいの入力速度ですが、初見の漢字かな交じり和文10分で1500~2000文字くらいは入力できて、ロールオーバー打ちの良さも実感できて疲れを感じないので、やはりローマ字入力そのものに問題があるとは言えません。
なので、ローマ字入力とかな入力を突き詰めたら、速度は差がないんじゃないでしょうか。
かな入力のほうが速いという主張はよく見かけますが、結局はそちらに慣れているという主観が強く、配列が優れているという根拠にはなっていないと思います。
かな入力がおすすめな例外
ここまでかな入力のデメリットばかり書きましたが、場合によってはローマ字入力よりもおすすめできることがあります。
仕事ではタイピングすることが(将来的にも)なく、パソコンを使うときは閲覧がほとんど、文字入力は検索キーワードの入力くらいしかしない。
というように、タイピングが速くなる必要性がない人なら、手元を見ながらのかな入力で十分です。
何よりJISかな入力はJIS規格のため、ほとんどのキーボードにかなが印字されていて、練習しなくても、誰でもとりあえず文字を入力できるというのは大きなメリットです。
小さい文字「ぁぃぅぇぉゃゅょっ」は、その文字のShift側なので、「打ちにくいけど覚えやすい」という、初心者にとってありがたいメリットもあります。
通常の五十音が単打面で、拗音がShift面というのもルールが分かりやすいので、覚える必要がありません。
手元を見ながらゆっくりのタイピングなら、打鍵数の差がそのまま入力速度の差になるので、タイピングが遅い人ほどかな入力の恩恵を受けやすいとも言えます。
もちろん手元を見るとタイピング能力は伸びませんが、逆に、伸ばす必要がない人にとってはメリットだらけということになります。
小さい子どもにはどっちがおすすめなのか
ときどき見かける話題。ローマ字を習う小学3年生より前くらいの小さい子供がキーボードに興味を持った場合、ローマ字入力とかな入力どっちがおすすめなのかというもの。
JISかな入力ならとりあえず文字入力ができるメリットがありますが、結局学校ではローマ字入力をすることになるので二度手間になるのと、かな入力に慣れると、ローマ字入力の習得に弊害が出やすくなります。
(入力方式のスイッチングコストは、ロマかな論争を見る限りでも非常によく見かける。人は最初に慣れた方式が上達するほど、他の方式への移行が心理的に大変になる。)
ーーー
一方ローマ字入力は、小さい子にとっては最初に文字を入力できるかどうかのハードルが上がります。ローマ字一覧表を見せても、呪文のように感じるかもしれません。
うまくいった例としてはYouTubeで検索するために音声入力やローマ字入力を覚えたというのをいくつか見かけるので、子どもがやりたいことをゴール地点にして目的意識を持たせることは非常に効果があります。
その意味で、「パソコンスキルを……」とか、大人のモノサシで考えることは弊害になりやすいので気をつけましょう。
ーーー
ここらへんの事情を踏まえると、小さいうちからJISかな入力が上達しすぎると、逆に将来のスイッチングコストが大きくなるのでおすすめしません。
小さいうちからローマ字入力を練習したほうがいいのかも議論が分かれるところで、無理に特訓するのは負担が大きくなる危険性もあります。
ポケモンタイピングDSみたいなゲームに興味を持ったらすべて解決するんですけどね。
日本一になった小学生も、4歳のときにポケモンタイピングにはまったのがきっかけだったというのが紹介されていました。
子供が上達するためには、うまく作られたゲームなど、遊びの要素を取り入れることができれば理想的でしょう。(そのためには大人の目利きが必要になるので当然難しいですけど)
まとめ
ということで、かな入力がおすすめできる人という例外はありますが、
「タイピングスキルを伸ばしたい初心者にどの入力方式をおすすめするか」という質問に対してはローマ字入力のほうがまだマシ、という結論になります。
どのパソコンでも使える(職場でも)という最低条件をクリアできるのがローマ字入力とJISかな入力だけで、かな入力にはさまざまなデメリットがあるので、どっちみちローマ字入力しか選択肢がありません。
ローマ字入力でも、タッチタイピングを覚えて、飽きるならタイピングゲームで練習して、突き詰めたいなら最適化を導入すれば、疲れにくくて実用以上のタイピングスキルにできます。
ーーー
それと、ローマ字入力が疲れるという人は、押下圧が軽いキーボードも検討してください。
肩こりや指の痛みが気になっている人は、入力方式よりも押下圧を見直してみるべきです。そのくらい軽いキーボードは疲れにくくなります。
予算があるならRealforce 108USなどの押下圧30g、もしくはリベルタッチ(押下圧35g)、予算が無いならロジクールK120が押下圧50g(メンブレンキーボードとしては軽め)。
メカニカルキーボードの赤軸や茶軸なら45gだけど、値段がそこそこ高い割に中途半端な押下圧・・・。
Realforceについては記事も書いてあるので、キーボードにこだわる人は読んでみてください。
ちなみに肩こりを減らす手段として、ハの字型のエルゴノミクスキーボードが紹介されることがありますが、押下圧が重たくて本末転倒になることもあるので、買うならよくチェックしましょう。
個人的にはエルゴノミクスよりも、押下圧を軽くしたほうが、腱鞘炎対策の効果は大きいです。
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関連:タイピングの資格
私はローマ字を10年、かな入力に変更して5年のものですが、かな入力の方がローマ字入力より早いし、ミスも少なく、思考のノイズも少ないです。小指の疲労も、使い続けているうちに無駄な力がなくなるので、いまでは特に意識していません。
両者を公平に比較するためには、大体同じ期間使用して、両者の経験値を同じにしなければフェアではないと思いました。
参考になるブログも読みましたが、速さが同じになった=ローマ字と経験値が同じになったではないと思います。長年使い続けているローマ字の方が無駄な力が少ないのは当然です。
初心者がローマ字入力から入った方が良いというのは私も同感ですが、不公平な断定で、風評被害を撒き散らすのはやめてもらいたいです。